RISING SUN
軽音部1
最初のバンドが登場した。
会場は歓声に沸いて。
初っ端から最高の盛り上がりを見せる。
その歓声に負けないアーティストたちの音を創り上げる。音響担当もまた、アーティストだと実感した。
ライブが始まってしまうと、ブースはひとまず傍観に徹して、プレイヤーの音を監視する。
この会場で、どんな機材を使って観客に音を聴かせるか。プレイヤー自身が構築しなければ意味がない。
音響スタッフは、その音を適切に調整して提供するだけだ……と、店長は言う。
「──だからPAは怖がられんだよ」
諏訪がうんざりした様子で、嫌そうに言い捨てた。
「元バンドマンのPAは特にヤダ」
珍しい。
諏訪が店長に絡んでる。
「店長の仰るとおりです」
トモアキがブースに現れて。
おれたちの後ろで何やら熱く語り出した。
舞台音響も演奏中は傍聴に回る。
そんな時間を潰しつつ陽射しを避けてテントの下にやってきた。
……他二名も。
「ロックバンドは音質までを構築してこそクリエイター。音のアーティストたる所以です。…………PAに屈しないぞおれは!」
プレイヤーの立場でものを言うトモアキは、相変わらずの音ヲタクだ。
こいつは過去に、音をPAに独断で変えられて。
諏訪曰く、ブチ切れてバトルでドッカンな武勇伝の持ち主らしい。
ヲタクのこだわりはある種の偏執だからな……。
逆鱗に触れると、祟られる。
初めはただの優等生だと思っていたが。
こいつの音に対する執念は鬼気迫るものがある。
『よさこい』では、エフェクターをプログラムしてあり得ない音で会場を沸かせた。
ある意味凄いアーティストだ。
こいつら4人とも残念なキャラのくせに、ひとりひとりがトップクラスのプレイヤーで。
おれにはそれが信じられない。
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