RISING SUN
会場にはいりました2
「──御堂。……時間無いぞ!急げ!」
「はい!」
「セッティング終わったらおまえが調整しろ。すぐ音合わせで本番だぞ」
「マジすかっっ!?」
「──なんだよその体育会系なノリ」
おれと店長のやり取りを聞いて、諏訪が笑った。
テントの中に、ミキサーを中心にした機材が、とりあえずレイアウトだけ決まって、ブースで大まかに配置されていた。
音響機材は大手レンタル会社が関与して、搬送と骨組みまではセッティングしてくれて。
それが一番大変な作業だから、おれたちにとってはありがたい流れだ。
だけど、時間が惜しいから、おれたちもセッティングに関与して仕上げていく。
それらをセッティングしたらテストと調整。
おれはもう素人アシスタントじゃいられなくなったわけだ。
諏訪とふたりで、ミキサーとグラエコ、エフェクターを組んでいくと、PA板前に陣取って、もう早本番に雪崩れ込まんとする勢いが店長とシゲさんから伝わってくる。
おれは加速度的に緊張して。
諏訪は、そんなおれの浮足立った緊張を笑った。
演奏予定の曲は、この間諏訪にみっちり叩き込まれて。
ハコと野外の音響の違いをレクチャーされた。
しかも、音源のCDとライブはまた違って、CDの効果に近づけようとしてはダメな訳だし。
生音の良さを削がない野外での音響効果って……正直言ってぶっつけ本番だ。
機材搬入が主だと思っていたら、それはトモアキたちの仕事で。
おれと諏訪はPAの夜間交代要員だと聞かされた。
汚ぇ……。
んな事ひと言も言わなかったくせに。
だとすると、この二日間、特に二日目は徹夜だって事だよな。
仕方ない。
仕事だから、ぬるいことは言ってられない。
店でミキシングのパターンを何点か教えてもらった。
何事もなく、ライブが成功するのを祈るだけだな。
PAブースのテントの軒下には、テルテル坊主がずらりと並んでぶら下がっていいる。
――この晴天が続きますように
おれも一応祈りを捧げておいた。
いや
無神論者だけど
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