RISING SUN
駅の三つ巴 4
「――どうして…………」
茫然としながらも諏訪が尋ねた。
関係はとっくの間に終わらせたはずなのに。
良し悪しは別として、未だに何かと諏訪を構う。
いくら行き先が知れていたとは言え、実際にこんなところで会うのは疑問だったに違いない。
「何言ってんの。毎年の恒例じゃない」
先輩は、関係がどうあれ諏訪を可愛がる。
それだけは良く分かった。
「今年は一緒出来なくて残念だけどぉ……。って、なに浮気してんの?」
諏訪の両腕を拘束している茉莉さんと花蓮を交互に見て、先輩は諏訪の不埒を咎める。
まずい!
先輩はおれと諏訪の関係を知っている。
こんなところで間接カミングアウトなんてされでもしたら……。
おれは先輩の指摘に狼狽した。
「いやあの……ちょっと……」
傍観に徹することなんて出来なくなったおれは、女と諏訪との間に割って入らざるを得ない。
「あんカオルくん……相変わらずオトコマエ。だいじょおぶ妬かないで」
先輩は、傍に寄ったおれまで捕まえて、キスを寄越してきた。
はあああぁぁぁ────っっ!?
ちょちょちょちょちょちょっっ!!
止めてェェェェェェッッ!!
そんなにフレンドリーにしないでえェェェェッッ!!
おれたちのアヤマチが、バレちゃうでしょうがぁぁっっ!!
おれは唇を奪われて、パニクって硬直したまま動けない。
そんなおれの動揺を知ってか、先輩はそれなりに早々と解放してくれた。
「ゴチソウサマ ……浮気はダメよ?ふたりとも」
おれと諏訪の頭を両手で抱えて、さらに強引に交互にキスをくれる。
「──じゃあねえ。また会場でねぇ〜〜 」
先輩は、嵐のように場を完全に掻き回して。
嵐のように去って行った。
台風一過。
まさにそんな感じで、辺りはシン……と静まり返った。
…………………………。
「………………兄弟?」
どこからそんな言葉覚えてくるんだァァァァ────ッッ!?
驚きの表情と共に向けられた花蓮の言葉に、おれの方が驚いた。
真っ赤になる花蓮の疑いの眼差し。
真実を見抜かれて、おれは図らずも動揺を隠せず赤くなってしまった。
おれの無言の動揺を察して、花蓮は衝撃に押されて身を引いた。
諏訪から少しずつ離れて行く。
「──まさか……?3ピ……」
あの、鉄面皮な茉莉さんでさえ、先輩の威力に負けて諏訪から離れて行った。
なんか凄い誤解を生んでいるみたいだぞ
諏訪
なんか言え
おれは居たたまれない
「──なんで先輩が御堂にキスすんの?」
そんなコトここで言わないでえェェェェェェッッ!!
ヒヨコ頭の癖に、なんでこういう事には敏感!?
冷たくなったおれの首筋。
多分おれの顔は色を失って蒼くなっていたに違いない。
そんなおれに、さらに冷たい諏訪の視線が突き刺さった。
「──朱鷺雄!待たせたな」
一触即発な現場に、遅れて到着したRV車の店長とマイクロバスを調達してきてくれたシゲさんが現れた。
グッドタイミングです、店長
おれは、とりあえず仕切り直しのチャンスを得て、泣きたい程嬉しくて。
これからの事を考えながら、身悶えしたくなる衝動に駆られていた。
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