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獣道はいりました
不審な恋人2



 球技大会から2日後。
 玄関にある校内の学生掲示板に、大会の写真が貼り出された。
 女子のきわどいアップや煽り気味のアングルは、スケベな野郎の欲望を掻き乱して、掲示板前は人だかりが出来ている。

 色々と満たされないおれは、無意識に立ち止まって目の保養をしていた。
 しかし、その写真に紛れて何気に目立っているのが、おれと諏訪のツーショットだった。

 男子はそれなりにいい写真が揃っている。
 っつか。
 被写体……怪しくないか?
 野郎同士なのに、解釈によってはみんなカップルに見えなくもない。
 しかも、これはほとんどがカメラ目線じゃないから、何やら盗撮のようだ。
 望遠レンズを駆使しての撮影だろう。
 気付かないはずだ。

「いいでしょうコレ」

 掲示板の前でぼんやりと考えながら写真を眺めていたおれに、背中から女が声をかけてきた。
 振り返って声の主を確かめると、おれの後ろに同じクラスの女子が立っていた。

 ショートカットの利発そうな女。
 さっぱりとした性格で細くて微乳の彼女に惹かれているマニアな野郎は少なくないが、信じられないことに、こいつは諏訪のバンドのギターと付き合っている。
 あの地味な優等生のどこに魅かれるのか。

 ──いや。
 一応ギタリストだからな。
 色々と好いのかもしれない。

「わたしが撮ったの。結構あなたたちのカップリングが人気で……。売れてるんで助かってるんだ」

 カップリング?
 この女、気付いているのか?

 おれは少しだけ身構えた。

 にっこりと笑うだけの彼女は、ふと何かを思い出したようで、カバンを開けて中から封筒を探し出した。
 それをおれに差し出す。

「写真の売れ行きがよくて部費が潤ったのも、モデルがいいからだよね。アリガト。……これお礼ね」

 彼女は封筒を渡しながらそう言い添えて、笑顔を残して去って行った。

 要するに、この写真集は彼女の商品で、おれと諏訪がそのモデルとして売れ線だったと言うことか……。

 彼女のスリムな後ろ姿を見送ってから、おれは封筒を開けて中を確かめた。
 封筒に入っていたのは、おれたちの写真の数々だった。
 掲示されている写真は、そのうちのごく一部だけで、ゲーム以外でも一緒にいるおれたちの姿があった。

 結構マークされていたらしい。

 これからは、気を付けないと、いつ盗撮に遭うか分からない。
 売れていたのは、たぶんこっちの方だな。
 闇取引なんだろうが……。
 おれは背筋が寒くなった。

 それにしても、諏訪は写真うつりまでいい。

 しかし驚きだ。
 おれが知らなかっただけで、おれが見ていない時に限って笑顔でいる。
 試合中におれが抱きついた時の写真。
 そこに映っている諏訪は、はにかむように微笑んでいた。
 こんな表情を見せられると、やっぱりおれの傍がいいのだと思わせられる。

 なら、いよいよもって理解に苦しむ。
 アイツはいったいどうしたって言うんだ。

 一枚ずつ写真をめくって眺めていると、何枚かの諏訪の表情アップがあった。
 望遠だろうに、それでもよく撮れている。
 汗で肌に絡む髪が妙に色っぽい。
 憂いを含んだような伏し目がちな表情には、何だか凄くそそられる。

 あ………。
 部活前なのに、股間がやばいコトに……。

 表情だけでくるってのは、おれも相当たまってるな。
 おれは深呼吸して、平常心で込み上げる欲望を自制した。

 ジャージの上着を着ていて良かった。
 下だけなら確実に悪目立ちしていたところだ。
 今は部活に集中して、これは家に帰ってからのオカズにしよう。



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あきゅろす。
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