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獣道はいりました
Deep affection2





週末のライブハウス。

今、おれは諏訪と一緒にバイトに入っている。

勉強だけじゃバランスが悪いから、おれは両親を説き伏せてこのバイトに入った。

週末だけの力仕事が主だったが、深夜零時を過ぎると、おれと諏訪はミキサールームに籠って、人目を避ける。

それは、おれたちにとっては、特別な時間だった。

おれたちは『ここ』から始まった。
だから今でも、そしてこれからもここは特別な場所であり続ける。

おれは、盛り上がるステージとフロアを眺めながら、以前から抱いていた疑問を思い出した。

「諏訪」

「うん?」

諏訪は、ステージからおれに視線を移した。

「──店長…って、結婚してる?」

「いや。独身だけど……」

「恋人とかは?」

諏訪はおれの疑問に興味を持って、椅子をおれの傍にずらして密着してきた。

「なに?身辺調査?」

近くからおれの顔を覗き込んでくる。

「まあ……ね」

「恋人とかは聞いたことないよ」

「誰かと暮らしてたりするか?」

「ああ」

諏訪の表情が反応した。

「──シゲさんと」

「シゲさん!?」

まさかと思っていたが、ビンゴだったのか?

以前から何となく、おれと諏訪との関係にやたら勘が働いて好意的でおかしいとは思っていたんだが………。

「いつから?」

「あ〜……。この店開いた時からだから。おれが中1の時からかな」

「5年か」

「なに?」

「──あ、いや。そんなに長く……。シゲさんも彼女とかいないのか?」

「いるように見えないよ。つか、あのふたり結婚する気ないって言ってたし」

「まじで?」

「うん。なに?なに気にしてんの?」

諏訪が、興味を持っておれに迫る。
おれは、そのやんちゃな顔が可愛くて、背中を抱き寄せてキスで応えた。

週末のバイトの後は、おれたちは事務所に泊まる。

深夜は電車がないので、諏訪はいつもそうしていたようで。
どうして叔父である店長の家に泊めてもらわないのか聞いてみると、叔父の家より事務所の方がゆっくり休めるから……との理由で、借りていたらしい。

元々泊まり込み用でソファーベッドが置いてあったし、ロッカーのひとつには寝具が入れてある。

キッチンもあり、その奥のトイレは何故かユニットバスなので、泊まるには十分な場所だ。

「店長とシゲさんの家って気を遣う?」

「あ、いや。そう言う訳じゃないんだけど……」

諏訪は考え込んで、そして改めて応えた。

「でも……なんか、邪魔しちゃ悪いかな……って」

「………………」

おれは、それ以上掘り下げて訊く事が出来なかった。

諏訪がそんな雰囲気を感じ取ってるって事は、十中八九あのふたりはデキてるってコトだろう。


人生の先輩だったんだなあ………色んな意味で。

道理で、好意的だったはずだ。



クリスマスを翌週に控えての週末なので、今夜は早く店を閉めた。
と言っても、とっくに午前3時を過ぎている。

片付けは午後からにするとして、ごみ捨てだけを済ませてから、店のシャッターを閉める。

シャッター脇の狭い扉から店への階段を降りて、おれたちは事務所に撤収した。

先週から定期考査や模試が続いていたので、おれは少し疲れ気味だった。
諏訪がシャワーを浴びている間にベッドを用意していたが、シーツを敷いてからウトウトしてきたので、ベッドに横になった。



「──御堂」

温かい手がおれの肩を揺り起こす。

起きなきゃな……と思いながら身体は動かなくて、まだウトウトしていると、突然胸が寒さに晒されて、次に乳首が熱く柔らかいものに包まれた。

「──っ、あ!?」

吸われて刺激されて、おれは思わず声を洩らしてしまった。

目を覚まして下を向くと、おれの視界に亜麻色の毛の塊が入ってきた。
そのさらに下は、すでに肌色だった。

おれが起きたことに気付いて顔を上げたそれは、バスタオルを腰に巻いただけの諏訪で、髪もタオルで拭いただけのようにまだ湿っていた。

諏訪は、身体を重ねたまま上にずれてきて、おれの唇にキスを寄越してくる。
ゆっくりと時間をかけて、じわじわとおれを追い詰めて、おれの欲を押し上げる。

重ねるキスと、直接触れる諏訪の指先に焦らされて、おれのそこは熱塊と化していた。

「諏訪……」

喘ぎながら上擦った声で諏訪を呼ぶ。
諏訪は甘い声で応えた。

「どうしたの?」

「おれ……」

ためらいを伝えるおれに気付いて、諏訪はおれを上から見下ろした。

「うん?」

「おれが、抱かれるカンジになってんの?」

おれが訊ねると、諏訪が艶然と含み笑いを浮かべた。
その顔は………。


やべ、スイッチ入った

何がキーワードになるのか全然予測がつかないから避けようがない


おれが諏訪に見とれていると。
顔を近付けられて、ガッツリとキスされてしまった。

上手いんだなあこれが。
ゾクゾクする。

諏訪は完全にエロモードに突入したらしい。

「おれが下?」

もう一度訊ねると、諏訪はふんわりと笑った。

「御堂、疲れてるでしょ?」

「う……ん」

「動かなくていいし」

「いや。あの……」

短時間の前戲では、諏訪の大きいのを受け入れられない。
こんな状況では自信がない。

「痛い事もしない。大丈夫」

諏訪はそう言って笑顔を見せた。

「──芳」

身体をぴったりと合わせて、おれの肌を味わう。

「あ、あぁ……。おれ、シャワー浴びてない」

吐息と共に呟く。
諏訪はそれには取り合わなかった。

「旨いからいい」


……………旨味?


おれは、削り節にでもなったような気分だった。




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