獣道はいりました
獣道はいりました3
「諏訪」
おれは出来るだけ自分を落ち着かせて、諏訪に向かった。
自分の感情を押さえて関わらなければ、こいつとは衝突してしまう。
諏訪は意外と自分を崩さない。
馴れ合いも嫌う。
焦って自分の主張だけをしてしまえば、反発するのが目に見えている。
「──おれだって、おまえと同じなんだ。おまえを傷つけたくない。優しくしたい。……男同士が出来るって事も前から知っていた」
諏訪は、ポカンとした呆気にとられた表情でおれを見つめてきた。
知ってたくらいでそんなに驚くな。
今や常識だ。
諏訪。
「だけど、大切にしたかったから。おまえがその気になるのを待っていた。……分かるだろう?」
見つめ返すおれに、諏訪の視線が寄り添う。
おれは、諏訪に深く考える間を与えないよう、ひたすら口説き続けた。
「おれ……昨夜は初めてだったのに。すげえ良かったよ」
そっと頬に触れて、軽くキスを贈る。
閉じられた諏訪のまぶたが震えていた。
「おれも、おまえに返したい……」
甘く誘惑すると、諏訪はおれの首に腕を回して抱きついて来た。
「でも……御堂のデカイんだもん」
おまえ、ひとにあんなコトしておいて、ホントに勝手な野郎だな。
っつか、おまえの方がデケー……
いや!
……平常心だ。
「ローションあるし……大丈夫」
おれは諏訪の首にキスをして、そっとそこを舌先でくすぐった。
戸惑う諏訪は、まだ迷いながらもおれに従っている。
ベッドに誘って身体を重ねながら、おれは何度も諏訪にささやきを贈った。
「好きだよ……諏訪」
抵抗する術を封じる魔法の呪文。
そして、侵入するためのパスワード。
「──アイシテル」
甘いささやきが緊張を解く。
諏訪の身体が柔らかくおれを受け入れて、おれの身体に馴染むように抱きついてきた。
「御…堂」
諏訪の身体が反応して、おれを求め始めた。
厚いジーンズの上からでも判るくらいに、熱を帯びているそこは、怖くても逆らえない誘惑に負けて、期待と好奇心に膨らんでいた。
「愛してるよ……諏訪」
諏訪のジーパンのファスナーに手を掛ける。
その時、諏訪がぎゅっと抱きついて、おれにささやいた。
「──結婚してくれる?」
すげえよ諏訪
おれは一瞬で
OLと不倫する課長の気分にさせられて
おまえをどう言いくるめようか
考えを巡らしてしまったよ
がっついては怖がられる。
初めての時は、常に余裕で可愛がってやらないと、思わぬ痛い目に遭う。
こっちが真剣に集中すると、途端に怯えて抵抗しだすのは何度か経験して学習した。
とりあえず、そんな基本に則って、今日は1日離さないぞ。
諏訪。
病み上がりには結構キツイかもしれないが、昨夜あんなコトやこんなコトまでやらかす事が出来たコイツなら大丈夫だろう。
抱かれていればそれでいいんだ。
考える事なんて何もない。
おれが嫁になどならないってコトを、思い知らせてやるから覚悟しろ。
今日はたっぷり可愛がってやろうじゃないか。
……ふふ。
おれの中の課長気分がなかなか抜けなかったが、諏訪を脱がせてからは、そんな妄想は跡形もなく消し飛んでしまった。
偉そうに意気込んでいたくせに。……やられた。
おまえのエロさは10代のヤりたい盛りには毒だ。
諏訪。
諏訪はほぼ半裸だったから、脱がせるのはあっと言う間で、おれもさっさと全てを脱ぎ捨てた。
肌を合わせるとその感触に酔わされる。
昨夜はあんなに抱き合ったと言うのに、立場が違えばまた新鮮だ。
さらりとした滑らかな感触がいい。
これが徐々に火照って汗ばんで、しっとりと吸い付くように馴染んでくると思うと、たまらなく期待が高まる。
ぴったりと身体を寄せ合って、キスを贈る。
おれと諏訪の熱くなったソコも、ぴったりと触れ合ってキスを交わしているようだった。
昨夜から、おれたちは何度キスを交わしただろう。
諏訪の唇の感触も、舌の熱さも、揺るがなく記憶に刻まれて、やっと諏訪がおれのものになったのだと実感する。
キスなら諏訪も慣れたのか、おれの唇を味わう余裕すら見せて、おれを煽ってくる。
触れて、絡んで、濡れた唇に何度も口づけておれたちは互いの存在に執着を見せた。
繰り返すキスで否応なく上がる体温が、諏訪の肌を紅く染める。
ほんのり赤く潤んだ目が、諏訪の欲情を示して、おれはさらに煽られた。
おれは唇を首から身体に滑らせて、諏訪の胸の上を少しだけ吸い上げた。
すると、諏訪は甘い喘ぎを聞かせて、おれを抱きしめた。
おれが吸った肌に痕が残る。
そんなに強く吸ったつもりはなかったのに、この肌には簡単に痕が付いてしまうんだな……と、どこか冷静な自分が感心していた。
でも、止められない。
おれの唇に触れる肌の感触が、本当に心地よくて、ついその感触を楽しんでしまう。
しかも、綺麗な桜色の小さな乳首が、おれを誘って止まない。
そっと唇で挟んで、舌で撫でてから吸い上げると、諏訪は敏感に反応した。
ここが随分感じるんだな。
その声が可愛い。
おれはもっと甘い声が聞きたくて、両の乳首を口と指先で撫でて舐ぶって、時に強く刺激を与えて諏訪の情をさらに煽った。
重なる身体の一部が熱く勃ち上がって、おれの下腹を押し上げてきた。
喘ぐ呼吸が、まるで熱に浮かされているようで、諏訪が発情している事が伝わってくる。
もう……怖くないかな。
おれはまた身体の位置をずらして、諏訪の顔を覗き込んだ。
指先で頬に触れると、ピクンと首をすくめて反応する。
スイッチ入っちゃうと、こんな事すら感じてしまうんだ。
「御堂……」
困ったように、咎める口調が可愛すぎ。
おれは、キスをしてから諏訪に訊ねた。
「するけど……いい?」
そんな問いかけに、困ったように顔を赤くする。
それがまた新鮮で可愛い。
「どうして……そんな事訊くんだよ」
いちいち確認するなって?
そりゃ同意は必要だからだろ?
やっぱり無理矢理はいけない事だとおれは思うから。
おれが黙って答えを待って見つめていると、諏訪は困惑しながら視線を逸らした。
「──こんなに……されたら。ちゃんと最後までして欲しいよ」
視線を逸らしたまま、ためらいがちに応えた諏訪の恥じらいが堪らない。
おれは愛しさMAXで、諏訪を抱きしめた。
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