獣道はいりました
ふたりきりの夜6
「御堂……」
おれの白濁に滑る欲を指で刺激しながら、もう片方の手でおれの頬や髪を撫でる。
身悶えするおれから、不意に身体を起こして、諏訪はおれを見下ろした。
「御堂……キレイ」
快楽に酔った表情を見せて、火照る視線をおれに落とす。
「──バカ言うな」
なけなしの理性がおれを正気に戻した。
「どうして?……すごくキレイだよ」
色に狂わされる男のおれを「キレイ」だと言うおまえの感性が理解できない。
「絵画から抜け出してきたみたいな……美青年」
おれの胸に指先を這わせて、諏訪は夢見るような表情を向けてきた。
「ダリとかだったら怒るぞ」
「──ミケランジェロ」
高尚すぎて、おまえは今、おれの理解を越えたよ
「ミケランジェロは春画は描かない」
おれの返しで諏訪の表情が艶をおびた。
「──御堂は今、自分がどれだけキレイか、分かってないんだ」
熱い楔はおれの凝りを容赦なく責め続けて。
諏訪の指先がおれの割れた先端にもぐりこんだ。
「──ぁあっっ!!や……んぅ」
思わぬ刺激に責め立てられて、おれの身体が戦慄いた。
諏訪は熱に浮かされたように、陶然とおれを見下ろす。
「ずっとおれのそばで、こうやって抱かれるためだけに生きてくれたらいいのに」
おれは、魂を何処かに持っていかれたような諏訪の顔を見て、こいつも壊れているって事が、十分に理解できた。
おれたちは、心も身体も欲に支配されて。
快楽だけを求める下等な存在に成り果てていた。
「諏訪……」
肩に担ぎ上げたおれの膝裏にキスをする諏訪は、相変わらずの落ち着きを見せながら、裏腹に壊れた感情をおれに注いで、さらにおれを責め続ける。
おれは諏訪に訴えた。
「──もう……全部、出してしまいたい」
決定打のないまま一歩手前で焦らされながら、おれの熱塊からは沸々と白いマグマが湧いて出て。
トロトロと長引く快感に、辛い疼きを与えられる。
おれは限界だった。
「いけるの?」
音を上げるおれに向けられる諏訪の甘ったるい声は変わらない。
おれをこんなに乱していながら、甘やかせる事も忘れないコイツは、なんて一途で優しいいんだろう。
「いきたい……諏訪」
素直に応えると、諏訪はおれの中の快楽の実を、長い矛先で強く擦って押し上げた。
「んぅ……あぁっっ!!」
一際大きくなった諏訪が、おれを急き立てて、強烈な快感がおれを蝕む。
「御堂……もっと、見せて」
諏訪の手がさらに速く上下して、おれを導き出す。
「その、キレイなカオで……。おれもいかせてよ」
そう言った諏訪は、もう何も返せなくなったおれの陶酔を見届けてから、さらに速くおれに身体を打ち付けてきた。
「あぁ……ヤバい。気持ちイイ」
諏訪が、独り言のような呟きを洩らすと同時に、おれの中の圧迫が増した。
諏訪もまた終わりを予感したに違いない。
おれはもう何も見えなくなって、全身に広がってゆく痺れにも似た、蕩けそうな快感に押し包まれた。
次の瞬間、閉じたまぶたの裏が真っ白になって、今まで体験した事のない絶頂感を味わった。
ふと我に返ると、おれは諏訪の身体の下敷きになったまま、ぐったりと重なっている諏訪の身体を抱いていた。
信じられない程の動悸が互いの身体を揺さぶって共鳴している。
全身から汗が噴き出してきて、色んな体液にまみれてヌルヌルした身体は、少しだけ気持ちが悪い。
予想通り、シーツはまたシワの数を増やしていた。
「諏訪」
おれの声に反応しない諏訪はぐったりとしたままだった。
「おい。重いって!」
おれは諏訪の背中を叩いた。
汗が跳ねて、ペシペシと室内に音が響く。
だが、諏訪はピクリともしないで、あろう事かおれの上で寝息をたてていた。
「おい!?」
おれは焦った。
こんな状態で一体どうしろと言うんだ?
「──寝るのはせめて、抜いてからにしろ──────っっ!!」
おれの悲鳴に近い叫びは室内に虚しく響いた。
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