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獣道はいりました
ふたりきりの夜4





諏訪はけっこう感じちゃった……ってコトなんで、間違いなくしてくるに違いない。

だけど、おれには抵抗がある。

なんだかおれがおれじゃなくなるような。
不安と言うか危機感と言うか…。

でも、嫌がったらマズイだろうな。
男同士の行為に必要な部分をおれが否定しては、こいつのやる気が殺がれるってものだろうし……。

それにつけてもこのテク。

竿だけじゃなくて、稲荷の裏まで舌の上で擦られて、不意に袋ごと口に含まれて男珠を転がされては、魂まで吸い取られてしまいそうな気分になる。

吸い付くように舌を密着させて、竿をじんわりと舐め上げてから、笠の縁に舌先と唇で音を立ててキスをくれる。

おれの腰全体が落ち着かなくなるほど気持ちよくて、こんなふうに翻弄してくる諏訪との行為なんて考えもしなかった。

どうしてあんなに悩んでいたのかさえ分からなくなってしまう。

こんな諏訪の在り方に、おれの方が戸惑いを覚える。

そうこうしていると、諏訪は予想通りおれの穴を責めてきた。

何やらヌルヌルした感触の尖端が、抵抗もなくおれの中に入ってくる。

気構えがあったから、初めての時ほどインパクトは感じないが、それでも正体不明の侵入物には不安がある。

「諏訪。……これ、何?」

ヌルヌルの正体を訊ねると、諏訪はまたおれの股間から顔を上げてやんわりとした笑顔で返してきた。

「ローション。通販で買ったんだ。……痛くないだろ?」

こんなものまで買って、心の準備をしていたのか。

可愛いやつだな。

「ねえ。キモチイイ?御堂のここ。柔らかくなってきたよ」

おれは先日、先輩からさんざん秘孔を突かれて開発されてしまったから、本当は非常にまずいんだ。

手前の肉の凝りを刺激されてしまえば、おれは簡単に快楽を掴んで、呆気なく果ててしまう。

穴は柔らかくなっても、おれの矛先は硬く張り詰めていた。

諏訪はそれを口に含んで、捩るようにスライドさせる。
秘孔はさらに責め立てられて、竿の気持ちよさなのか穴の気持ちよさなのか、分からないくらいに混乱する。

おれは、興奮させられて落ち着いていられない。
身体の芯が焦れて疼いてたまらなくなっていた。



「御堂。いいの?」

おれの様子を察した諏訪が訊ねる。



気持ちいい
身体が熱くて
気がふれてしまいそうだ



「──いいよ、諏訪」

おれが応えると、諏訪は泣きそうなほどの感激をみせて、おれに熱い視線を注いできた。

「御堂……」

諏訪は切ない顔を向けておれを見つめたまま、おれの両膝を割って持ち上げてから、広げられた股間の後ろに、熱い極太を圧し当ててきた。

「え!?」



どういう事だ?
なんなんだ?

こんなのっっ………



「力抜いて」

諏訪がおれの上に覆い被さってくる。
真剣な表情が恐いとさえ思えた。



おれが下だなんて………

聞いてね────────っっ!!



驚いて声も出ないおれの中に、諏訪の太いのがグイッと円環を圧し拡げて挿入ってきた。

灼熱の塊が、おれの中を少しのゆとりも残さず占領してゆく。

「ぅああ……。イッ…ったぃ」

「御堂。ダメだよ御堂。……ちゃんと力抜かないと」

おれの片足を自分の肩に担ぎ上げて、片手を自由にした諏訪は、その手でおれの顔や頭を撫でておれを慰める。

「おれ……御堂を傷付けたくない」

おれを思い遣る諏訪は、ちゃんと優しいのだと思う。
だけど、こんな展開は予想外で、おれは心の準備もないまま諏訪に支配されて、動揺を抑えられない。

諏訪はさらにズイと進んで、奥の骨にまで達しているような充実感と、中心を拡げられる熱い痛みが、おれの感情を拐って蹂躙した。

「──堂?………御堂」

諏訪が、おれの頬を伝う涙をキスで拭っていた事に気付いて、おれは我に返った。

動揺しすぎて、意識を手放すほど混乱していた。

気付いても、この身に降りかかった苦痛には、やっぱり逆らえなくて涙があふれてくる。

「御堂……」

諏訪はおれを抱きしめて、顔中にキスをくれる。

愛しくて、切ない感情を向けておれを見つめる。

それでもおれは、自分の事だけで精一杯だった。

「──痛ぇ」

おれの泣き言に困ったような顔をして、諏訪はまたキスで慰めをくれた。

「少し……このままでいよう」

馴れるまで動かないで、互いの身体が馴染むのを待つつもりの諏訪は、なんだか慣れている様子で。
熱いキスをもらいながら、やっぱり初めてじゃないんだな……と、変に感心させられた。

「御堂……」

諏訪は、優しく、甘く、おれにキスを贈り続ける。

くちづけるたびごとに、少しずつ混乱が取り除かれて。
落ち着きを取り戻して、おれは焦がれてやまなかった諏訪の肌を抱きしめた。

端から見たら、きっとおれは諏訪に縋っているように見えるだろう。

おれは本当に諏訪を抱きたかったんだ。
この、バカが付くほど純粋で優しい。高潔な存在を守りたくて……。

形はどうあれ、おれは諏訪をこうして抱く事が出来た。

願いと現実が逆転している違和感は、なぜか感じない。
なんとなく、充実感と達成感が込み上げてくる。

そして、いつのまにか身体の辛さが和らいで、じんわりと感動に満たされていると、不意に諏訪はおれから自身を引き抜いた。

突然の刺激に思わず声が洩れる。

何故?
……という疑問を向けたおれの視線に、穏やかな表情を返すだけの諏訪からは、こんなことをしていながら、衝動や本能的な欲を感じさせない。

さっきまでは諏訪の中に確かに見えた。

おれには、それに対する恐怖感があったのに。
今は、離れて行く諏訪を引き止めたいと欲に駆られる自分がいる。

「──そんな顔しないで……」

諏訪は嬉しそうにおれを見つめた。




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