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初恋はじめました
告白2





 大浴場は本当にあって、そこの受付カウンターからバスタオルとフェイスタオルを受け取った。
 御堂はロッカーの並ぶ脱衣場に入っておれを呼ぶ。

 傍に行くと鍵を渡された。
 それはロッカーの鍵で、御堂はそこに荷物を押し込んでいた。

 おれは隣のロッカーで、鍵を開けてタオルを中に入れた。

 おれがシャツのボタンに手をかけた時には、御堂は全てを脱いでいて服をロッカーにしまっていた。そして、ロッカーに鍵を掛けて鍵のベルトを手首に固定してから、フェイスタオルを腰に巻きながら大浴場へと入って行った。

 陽に焼けた広い背中と締まったウエストラインが、おれの目に焼き付いた。
 すげえ男くせえとか感じてしまって、自分の身体が貧相に思えてしまう。

 鷹兄があんな身体していたから、おれも大人になったらそうなれると単純に考えていたけど。
 そうじゃないんだな。
 年なんて関係ないんだ。

 おれは、自分の身体を晒すのが、何だか急に恥ずかしくなった。



 中に入ると、そこにはモウモウと湯けむりが立ち込めていて、視界がはっきりしない。
 辺りを見回していると、御堂の声がおれを呼んだ。

「諏訪。こっちだ」

 洗い場を早々に陣取って、セッケンをタオルで泡立てている。

 おれは御堂の隣に座った。

「空いてていいよなあ。時々近くの銭湯には寄るけど。たまにはこんな贅沢もいいな」

 御堂は広い背中をゴシゴシと洗いながら上機嫌だった。
  おれの気分転換とやらのためにやってきたはずのここが、御堂の安らぎの殿堂となっている。

 おれはなんとなく、拍子抜けしてしまった。

 恋して疼いていたおれの身体は、当の想い人を前にしても何にも感じないし、御堂も普通の態度だ。
 センチメンタルな気分は、瞬く間に萎んでいってしまった。

 おれは、タオルにボディソープをつけて、泡々にしてから身体を洗った。
 身体を洗うのに専念していると、ふと、隣からの視線を感じた。
 見てみると、頭を泡だらけにしている御堂が、俯いたまま視線だけをおれに向けていた。

「なに?」

 訊ねると、御堂は少しだけ困ったように目を伏せた。

「いや……べつに」

「なんだよ。気になるよ」

 シャワーで泡を流しながら、おれは強引に答えを要求した。

「言えよ」

 おれは御堂の肩を拳で突っついた。

「諏訪」

「なに?」

「おまえ……ワキ毛生えてないんだな」

 ホントは笑っちゃいけないことだからこらえていたと言わんばかりの表情で、衝撃的な指摘をされてしまった。

 おれの顔がカァッと熱くなった。

「なんだよ。じゃあおまえはどーなんだよ」

 御堂はすかさず腕を挙げて、セクシーなポーズで返してきた。

「ボーボーだよ」


――ホントにボーボーだった。


 なんだかおれは、正体の分からない何かに打ちひしがれてしまった。

「それは……おまえだから立派なんじゃないのか」

 おれは悔しくて認めたくなかった。保身に走る言葉に、御堂は呆れていた。

「おれは普通だよ。おまえがお子ちゃまなの」

「んだよ。おれだって、ホルモン全開になったらボーボーになるんだからな!」

 シャンプーをシャワーで流す御堂に反論する。

 おれもガシガシと髪を洗った。

「いつになるんだろうな……。大体アソコもちゃんと生えてんのか?」

 御堂は優越感すら見せて茶化してきた。

「ボーボーだよ!」

 おれはむきになって答えた。
 見せてやりたいけど、安易に見せたくない場所だったので公開は控えた。

 御堂はタオルでゴシゴシと髪を拭きながら、おれを見てニヤリと笑った。

「おまえ。まさか稲荷に生えている訳じゃないよな?」

 いなりーっっ?

「んな……生えるわけないだろ!」

 おれが驚いて反論すると、御堂はクスクスと笑った。



 え?
 どういう事だ?

 ……え?
 もしかしてハメられた?

 稲荷、生えるのか?



「御堂は?」

 おれは恐る恐る訊ねた。

「おれは……男だからな」



 No――――ッッ!



 心でシャウトして、おれは後悔の海に深く沈んだ。

 落ち込むおれを笑いながら、御堂はフェイスタオルを腰に巻き付けて立ち上がった。

「露天……あっちだから、先行ってるぞ」

「うん。おれもすぐ行く」

 おれはシャワーでシャンプーを洗い流してから、御堂が消えた方に行ってみた。




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あきゅろす。
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