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金獅子運送会社
金獅子運送会社 2







漆黒の空間に一条の赤い閃光が走った。

「4時プラス15より高エネルギー体接近」

淡々とジョゼが報告する。
その瞬間、ライアンの眉間がピクリと歪んだ。
ブリッジの空気が張り詰める。

「野郎……撃ちやがったな」

ライアンの唸り声をオペレーターたちは聞き逃さなかった。

(──キレた……)

ライアンの言葉を聞いた誰もがそう思った。

「輸送船はそのまま前進。攻撃は回避しろ。クラリオン反転、敵船に向かう」

正体不明の船団でも、攻撃が確認されたため迎え撃たなければならない。
クラリオンのブリッジは戦闘体勢に入って動き出した。

「ビームコートオン。迎撃用意」

「了解。主砲発射準備」

オスカーがコントロールパネルの表示を確認してライアンに告げる。
赤い閃光は、ミレイの操舵によって回避した船体の側舷を通過して、闇の中に消えて行った。

「三代目。お手並み拝見させていただきますぜ」

「あっしらの事は気にせんで、存分に暴れておくんなせぇ」

オープンな回線から、ドライバーたちの激励が飛ぶ。
それまで音声にダブって聴こえてくる雑音が気になっていたライアンだったが、どうやらそれは演歌やヘヴィメタルといった音楽らしい事に気付いた。それは、各々のコックピットからあふれるほどに騒々しく、ライアンの苛立ちを誘った。

「諸君の激励は嬉しいが、くれぐれもビームには当たらないでくれたまえ。積み荷は命に代えても守ってくれ。………守れなかった野郎は、地球で逆さ吊り7日間の御招待な」

ライアンはドライバーたちに告げてから、ジョゼに命じて強引に回線を封じた。

(──死ぬって、それ絶対)

クラリオンのオペレーターたちは、無意識なライアンのサービス精神に呆れていた。
なぜなら、ドライバーたちが一様に、ライアンの冷徹な言葉にさえ悦びうち震えるのが、手に取るように想像出来るからだった。

ジョゼが敵船のステルスを剥いで、詳細な座標を火気管理システムへと入力した。それによって反撃可能になった事をオスカーが報告する。

ライアンは砲撃を命じた。

クラリオンの主砲から閃光が放たれ、それをきっかけにして、ふたつの点を結ぶ空間を幾筋もの光のシャワーが交錯し明滅を繰り返し始めた。
しかし、クラリオンのビーム砲は成果を示さない。
ライアンはこれまでにない応酬に業を煮やした。

「直撃は?」

「してますよ。……それなのに弾かれる」

ジョゼの報告でオスカーは救われた。
自分のいたらなさではない事を証明してもらえて嬉しい。
しかし、成果が得られないのは事実だった。

「賊ごときが……。それなりの装備を充実させてきたって訳か」

ビームを弾く特殊コーティングを施した装甲が相手なら、長距離砲での攻撃では成果は期待出来ない。

「輸送船団が射程内から離脱しました」

「どうする?このまま振り切るか?」

ミレイが確認する。その口ぶりはどちらでも構わないと言ったニュアンスを匂わせる。
幾度となくくぐり抜けて来た防衛戦は数知れない。
職業軍人が経験するよりも多くの実戦を知っている彼らにとって、経験から学んだ戦術はより強い武器として襲い来る賊を撃退して来た。

「──ホーミングミサイル発射準備」

ライアンの選択肢がブリッジのオペレーターに告げられる。
彼らは一様に意外そうな表情を浮かべてから不敵に笑みを浮かべた。

ミレイが思わず口笛を鳴らす。

「了解。ホーミングミサイル発射準備」

「射程距離まで接近する」

クラリオンが賊の船隊に向かって前進し始めた。
船全体が戦意を高揚させるなか、ジョゼが新たに現れた船影に気付いた。

「2時方向から船団。……かなり多い」

急いで検索するジョゼはその船籍を確認してライアンに報告した。

「輸送船団です」

「すぐに迂回するように伝えろ。そんなところまでは守りきれないぞ」

ライアンはアクシデントに苛立って、指令席から立ち上がった。

「──船団から1隻、離脱して敵船隊に向かっています。ラインは繋がりません……受け入れない」

ブリッジの全員がひとつの予感を抱く。
自分たちと同様に、護衛船を所有する船団なのだろうか。

「所属は?」

「検索中……」

フロントスクリーンを通して、遠くに青い閃光が見えた。
賊に接近する船が攻撃を仕掛けたらしい。
クラリオンも同様に接近し、敵を射程内に捉えた。

「目標捕捉しました」

ライアンはただちに敵船隊への攻撃を命じた。


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あきゅろす。
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