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オリジナルBL小説
ファーストアクション
彼は、寝る子は育つの常習犯だった。

高校、大学の時の癖がなおらなかった。
今でも、電車の座席に座れば寝てしまう。
でも、都合よく自分が降りる駅の一つ前で、彼は起きるのである。

体内時計は素晴らしい。

座れるのはいつも終電だからである。
ある日、仕事が早く終わって彼は、電車に乗った。


『こんな満員に乗るのは、久しぶりだな』
彼は朝も電車だが、ラッシュを避けている為、この状態になるのも稀である。

彼は開かない方のドア際に押されるがままに今は辛うじて立っている。
辛うじてと言ってもこれだけ体が密着していれば、転倒など有り得ない。
だが、もたれかかるということもしてはいけない。
もどかしく、そして眠い。



違和感を感じたのは、それから数分も経たないうちだったと思う。

ぼんやりと広告を眺め、キャッチコピーにケチをつけていた時。
自分の尻に触れるかすかな指先を感じたのだった。

よくもまぁ、堂々とと思ったが……
『臆病者だな』とも思い。
鼻で笑った。

だが、尻の上を這い回る手はせわしなく動いた。

『尻ぐらいいいさ』と投げやりになった。

彼はただ眠たいだけだった。

揺れるドアにゴンと頭を打ちつけると、その男を無視してうとうとし始めた。


男はそれが気に食わないのか、遂には前を触って来た。

『えっ、ちょ、駄目だ。反応を返さなければこいつも止めるだろう。我慢、あと二駅』
彼は、自分にそう言い聞かせた。


だが、彼にとってまんざらでもないその触り方は、簡単に彼の体を熱くした。
その時やっと、体を触らせるがままにしていた、自分に怒った。

『くそ、何で触らせたんだ。こんな知らないやつに』

後悔むなしく、後ろで一人盛り上がっている男の独り言を聴いた。

「部長……」
『こいつ、俺の部下か!?』
そう思った時、降りる駅が近付いていた。
こちら側が開く。
開いた瞬間彼は男の手首を掴んで強引に連れ降りた。抵抗する手首をがっちりと掴んだまま、振り返る。

「鮎川……」
「部長、すいません。魔が差して」
「魔が差したぐらいで、触られてたまるか、来い」

彼は最近配属されて来た、元外回りの若者だった。
今は総務である。
彼、鮎川と接触があるのは朝礼の時だけだ。
最近入って来たばかりだから色々教えてやってくれと、まわりにも伝えていた。
誰が、彼の電車を教えたのだろうか?
それとも鮎川が自分で調べた?

「部長、どこに?」
「トイレだ。前屈みのままで帰れるか、責任取れ」
「責任!?」


二人バタリと個室に入って、一つの沈黙が流れる。


「いいか、抜くだけだ。最後までするなよ」
「そっ、それならいっそ電車の中で触らせて貰う方が……」
「この変態!?それなら誰でもいいだろ」
「誰でもいいわけないでしょ。部長、あなただからですよ」

ベルトに手をかけて器用にズボンごとパンツをおろした。
よろける部長を洋式の便座に深く腰掛けさせ、汗もにじんだその腹の上に白いものを落としている。
指で擦るとそれは、びくっと波打って

「んっ……鮎川、あっ」
「出そうですか??出して」
舌が這うと、それは一気に熱いものを吐き出した。

「さっ、後始末して帰りましょ部長。送ります」


トイレから出て二人は改札口を出た。


「送らなくていい。一人で帰れる」
「そんな顔のあなたを、人で返す訳にはいきません」
「……、勝手にしろ」


マンションの7階、部屋の前まで来ると
鮎川は
「では、部長これで失礼します」
そう言って
帰った。
その潔さに、拍子抜けだったが
その夜彼は、安心して寝る事が出来た。




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