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おおふり
ミハ→アベ←ハル 揺れる想い
ベンチで寝る阿部。
「疲れてるんだろ」
「少し寝かせとこう」
……
「阿部君、寝てる」
『可愛い、阿部がオレの、片想いの人なんて……オレなんて、相手にしてくれないのに。怒られてもいい、今がチャンス』
「んっ……」
ビクっ
「元希さん…」


『寝言だけで嫉妬するなんて!聞く前に、唇塞いじゃえば良かったのに!』

「ふぁっ、ん〜!!あれ、誰かいたような?気のせいか。」
「おっ阿部起きたか、どうだ練習再開か?」

「はい」
阿部は、篠岡が作ったドリンクをぐびぐびと飲み、防具を付けた。

栄口と、キャッチボールをしていた三橋に声をかける。「三橋〜、ごめん。練習……何?どうした」


『何だか、いつもと違うな。きょどってはいるけど』
「何?言わないと分かんないんだけど」
「あっ阿部君は……」
「何?」
「阿部君はっ、まだ榛名さんが好き?」
「榛名が好きだぁ〜、そんな訳ないじゃん」
「さっき寝言で、榛名さんの名前呼んでたよ」
「何か夢でも見てたんでしょ、それに榛名との思い出なんて、頭の奥にしまってるよ」

「……でも」

「何?嫉妬」

「うん!」

『何か積極的だな』
「心配する事ないよ、オレとお前って、一応付き合ってるじゃん」
少し小さい声で話す。が、三橋には通じなかったらしい。


「でも阿部君、させてくれないし!!」
「おい!三橋、凄い事叫んでる」
「ヒューヒュー」
「煽るな、田島。三橋、阿部個人的な話は、部活終わってからにしろよ」
「分かってるよ。三橋。投球練習だ」
「阿部君!まだ話は」
「やりたいだけなら、オレじゃなくてもいいだろ。文句言うなら、別れるからな!」
「ふぇ(涙)」
「ほら時間ロスだぞ、気合い入れて投げろ。受けてやるから」
「……うっうん」
『畜生、恥じかかせやがって。確かにまだそこまでやってない。それはオレの中に、あいつがいるのが原因なのかもしれない。でも……オレは、三橋が好きで三橋を受け入れたい』




自室
はぁっ
「んっ、あっ っああ!!」
はぁはぁ
『元希さん!!』
ドクン


『そう思っていても、三橋の言う通り。オレの中には、元希さんがいる。一度抱かれた、あの日からずっとあの人の温もりを求めてる』

ティッシュで汚れを拭き取っていると

「兄貴ー!オレの雑誌……なっ何して」

「お前も抜くか?」
「何言ってんだよ」
タジタジな弟。
「落ち着け、雑誌机の上」

弟が机の上から、雑誌を引ったくる様に持って行く。その後ろ姿に
「なぁお前は、何オカズにして抜く?」
「そっそんなの、分かんないよ!」

顔を赤くして怒って、出て行く弟。

『オレにも、あんな風に恥じらってる時あったっけ……。その頃に戻りたい。そしたらオレ、ちゃんと三橋の事……』


「三橋と、目合わせられる」


『練習の時試合の時、野球してる時は別だ。捕手として、その場にいる。だから奥底に眠った私情で、三橋から目を反らしたりしない。あいつの顔を見て、あいつが大丈夫か判断してる。サイン通りに、どんぴしゃに投げてくれる投手。目を離すわけない。それなのに……』

「なんで、榛名が出て来るんだ」



時は経って


「阿部、三橋の事許してやれよ」
「クソレに言われたくないね」
「……クソはやめてくれ」
「無視してる訳じゃないさ、避けてるのはあっちの方だ」
「そうは見えないけど、お前も避けてるよ」
「やっぱりそう思うよな?花井。さっさと仲直りしろよ。部活の雰囲気まで悪くなる」
「オレはそんなつもりは!!」
思わず立ち上がる
「バッテリーが、一言も口を聞かないで練習はないだろ。ミーティングはどうしたんだ?」
どすっと座る
「してない。三橋の奴、オレの顔見ない」

「阿部っ、おーい」
と廊下から、田島後ろに三橋が見える。一瞬三橋と目が合う、が反らされる。
「……、三橋!」
びくっ!と三橋の体が動き目が合う。凄い顔でにらみつけながら、こっちに来る阿部から逃げ出した!!

「三橋、待て!!」
追いかける阿部。取り残される三人は、二人の背中を見送る。


「あいつら、ゲンミツに目立つな。これで公認カップルだ!!」
「変な事言うな田島」
「オレと花井も、いつか公認カップルになろうな!!」「田島声でかい!水谷、今聞いた事は忘れろ。いいな」
「田島と花井がぁへぇー、いいんじゃない?」
「……いいんじゃないって、やめて来れ!田島が調子に乗る」
「オレ嬉しい、花井、なぁ〜花井も嬉しいだろ?なぁ?」





「三橋、待てって!!」
『階段キツイ。でもさすがに三橋。持久走は田島の次に早いだけあるぜ』

「三橋!!」
振りかえっては阿部の顔を見て、速度を上げる。
「ふわわっ!」
生徒の間を、かきわけ追いかける阿部。


『ちっ、あの崩れた顔、どうにかなんないのかよ?』

屋上に出て行く三橋、確か今日は。
オレは出た所屋根のある所で、立ち止まった。
夏シャツ一枚の三橋の背中が、雨に濡れて行くのを見た。

「三橋!」

びくつく三橋の体は、こっちを振りかえる気はまだないらしい。今からオレとお前に取って大事な話をしたいのに、想いを伝える時は、いつも中途半端でオレは嫌だった。

「そのまま聞いてくれ。先に、はっきり結論から言う」

「オレと、別れるんだしょ!それで」
「聞けって言ってるだろ!!」
「……」
「……、三橋が好きだよ。だからお前を、ちゃんと受け入れたい。それがオレの答え。確かにオレは、榛名に縛られてる所がある。だからこそ、お前とちゃんと向き合いたい。今好きなのは、三橋だから」

ぱしゃぱしゃ

向かって来る音に、三橋はやっと振り返り阿部を止め様とする。

「阿部君っ、濡れるよ」

そう言って差し出された手を、阿部は握り締めて、三橋に抱き付いた。

「お前だって、濡れてるじゃん」

濡れたシャツが、皮膚に張り付いた。そんな二人の体が合わさると、温もりがじんわりと伝わる。そんな感じが三橋を、興奮させた。
「三橋。」
耳元で喋る阿部。三橋はこの時、阿部よりも背が低い事を、少しだけ嬉しく思った。
「オレの事抱いて……」
「阿部君っ!……いいの?」
「うん、もう迷わない」
「オレ……オレっ嬉しい!!」
ガシっと抱きつき返す。
「おいっ!」
「ごっごめん」そう言って離れる。

「謝るなよ」
離れた体は、寂しさを感じていた。もっと触れ合っていたいって、欲していた。

「もう、戻ろうぜ」
「うん」階段を降り、教室に向かう。

「このまんまじゃ、授業受けられないな。着替え、持って来てるか?」

フリフリ
「じゃあアンダー着とけ。オレも、そうするからさ。下はジャージな」
「うん、分かった」
「いくら夏だからって、このままじゃ風邪引く」


アンダーとジャージで授業
「阿部、三橋と仲直り出来た?二人で、どこに行ってたの?」

「だぁ〜うるさい、授業中だぞ。それに水谷に話す事は、一切ない。俺のプラーベートだからな」
「え〜なぁ花井、花井も聞きたいよなぁ〜」
「うるさいぞ、水谷!!」
「はっ花井までぇ……」
「水谷!!静かにせんか!!」
バシ。
クソレの頭に先生の教科書が落下した。

「よし、野球部、この問題解け。篠岡お前もだ」
「へっ、あっはい」
と言われても、花井も阿部も成績は中の上。
問題を解くの何て、簡単さ。
先生はわざと水谷に、一番難しい問題を当てた。
横の篠岡が、優しく水谷を教えている。
「ごめん、篠岡」
「いいよ。ところで阿部君と三橋君は、仲直りしたの??」
「うん、したみたい」
「良かったぁ、それ聞いて安心した」
「篠岡、私語慎めよ、問題増やされる」と阿部。
「そうね、難しくない??」
「それは、こう解くんだよ」と自分の問題を済ませた花井が、篠岡の当てられた問題にとりかかる。
阿部は水谷を見てやる。
「野球部って、仲いいわよねぇ〜」
「ちよ〜!!あんた、誰が好きなの??」
といきなり発言。
「えっ!!いや、その、皆カッコいいよ」

「え〜、私なら田島君かぁ、泉君かなぁ」
「私は、阿部君」
一瞬ドキっとする隆也
「私、栄口君が好き。あの声が好きなの!!」
ペチャクチャ
「花井君って、凄いよねぇ〜」


「野球部に問題を当てたのが、間違いだったな」

「篠岡。止めろよ、恥ずかしい」
「むっ無理です」


放課後
グランドが使えないので、野球部は廊下で素振りなどの練習に励んだ。
「阿部君、今日家に泊まって行きませんか??」「……、なら家に来い」
「えっ??うん」
そう言いつつ、二人で帰るバッテリーを見て、皆安心した。
「今日の部活は、やり易かったねぇ〜」
「阿部と三橋が仲直りして、また絆が深まった!!」
「田島、話を締めるな。いつまた喧嘩するかわからないぞ、あいつら」
「花井とオレも、喧嘩しよっか??」
「ええっ??」
「そいで、仲直りして絆を深めるんだ!!」


今日は二人とも、歩いて来ていた。
「三橋、着替えとか取りに行くよな??お前の家に寄るか??」
「うん、そうする。親にも電話する」
「うん」
「あっ阿部君は、大丈夫なの家??」
「ああっ大丈夫。親は、弟の合宿について行ってるからさ。今日、オレ一人なんだ。都合いいだろ。」
と三橋を見てニヤッと笑う。

『ハワワ、阿部君、可愛いっ。それじゃあまるで、オレ……誘われてるみたい』

ドキドキ

三橋宅
「待ってて。すぐ用意してくるから」
「うん」
玄関で、待たせて貰う事にした。腰を下ろして

『三橋の家来たのって??カレー以来??
で三橋をオレの家に呼ぶのは、今回が初めて』

「阿部君」
三橋とは違う高い声で呼ばれた。
「あっ、阿部隆也です。いつもお世話になってます」「まぁ、丁寧にどうも。今日はレンが泊まるけど、宜しくね。これ二人で食べて」
と渡された。

『大量だな』

「ありがとうございます。頂きます」
階段を駆け下りて来た三橋は、その光景を見てきょどっていた。
「おっお母さん」
「レン、阿部君に迷惑かけない様にね」
「うん、行ってきます。」
「お邪魔しました」
「はい、行ってらっしゃい」
とフリフリと手を振って送ってくれた。
「あっ阿部君、それ」
「えっ??」
「オレが持つよ」
「おお、重いぞ」
と手渡すと、ずっと体制を崩した。
「だっ、大丈夫」

『さっきのシーン。なんだか阿部君を、親に紹介したみたいだった!!でもおかあさんが、もしもこういう関係って知ったら……』


阿部宅

「あれ??阿部君、誰か家の前にいるよ??」
「えっ??……榛名」
「えっ??」
傘をさして、家の前に立っている男。
遠目でも阿部には分かった。物腰、雰囲気で。

「何か用ですか??」
そう声をかけられて振り向く
「隆也、遅いじゃん……。あれ、こいつ投手だよな??」
「うちの投手です」
「仲良いんだな。 隆也、今日は話があって来たんだ、二人っきりで。だからさ、こいつ帰らしてよ」

「無理です。連絡もなしに来るあなたが、わるいんですよ。三橋入るぞ」
「うん」
「おい!!」
三橋が榛名に胸倉を掴まれる
「はわわっ!!」
「やめて、下さい!!元希さん、投手ですよ。怪我させたくないのは、あなたが一番知ってる!!!」

そう制されて榛名は、三橋から手を離した。

「だったら、隆也、面かせよ」
「三橋、先入ってて。ほら鍵」
「あっ阿部君、駄目だよ!!」
「いいから、家の中入ってろ」
三橋が、家に入ったのを確認して阿部は安堵した。

「で、話って??」
「三橋と付き合ってるな??」
「!!」
「見れば分かる??でもしてない」
「……、用件はなんですか??」

「用??用はこれだ!!」
と唇を奪う。強く抱き締められて、身動きが取れず傘は地面に落ちた。阿部にとって、もうこんな温もりはいらないはずなのに……。一瞬心地よいと思ってしまうのは、まだ迷いがあるからだろうか??


続く。








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