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風のトバリ3

  暖かい風の中で

「ここがハヤテの部屋ね。」
殺風景だけど・・・とにかくベットが一つ。他は何もない小さな一室だった。
・・・あと、ゲンマの部屋とトイレ、風呂台所で構成された家だった。もちろんマンションだけど。
あまり物はなかったハヤテは見たままを口にしてしまった。「あまり物置いてないんですね。」ゲンマはハヤテの言葉を聞いて素直に
「そうでしょ!?はい。」
ゲンマはハヤテの手に札を握らせる。
ハヤテはびっくりして札ごとゲンマの手を跳ね除ける。「なっ!!何のまねですか!!」
札が木の葉の様に床に落ちる。

「何のまねってお前。何か欲しい物があったら買ったらいいんだけど、いらない??」
「おかしいんじゃないんですか!!
私逃げますよ!!」
ゲンマはいたって冷静にハヤテを眺める。ハヤテは見られるのは嫌いなようだ。あからさまに眼をそらす。
「いいけど、逃げたって。
けど追っかけるけど。」
ゲンマは札を拾い上げ
「とにかくここはお前の部屋だから何したっていいぜ。じゃあ俺任務だから・・・・行ってきます。」


ハヤテはその時冷たく凍りついた心を少し溶かしてくれる春風に包まれた様な心地がした。

だが、ゲンマが出て行った後にしか言葉が出なかった
「行って・・・らっしゃい・・。」
ハヤテはその時思い立った。
家族に会いに行こうと・・・
会いに行って最初に何を話そうずいぶん会ってないから・・・
私を売ったお金でみんな三食食べられてるよね??
父はちゃんと切り盛りしているのか、それが気になるところ何だけどとにかく今から行ってみよう。
夕方までに着けるはずだから・・・
 
ハヤテは疲れた身体を休めず走り出した。
ずいぶん遠くまで来てしまったものだな、木の葉の里だからな・・・予想よりずいぶんありそうだけど・・・・大丈夫だろう。


だがハヤテの疲労はハヤテの予想以上に重く深かった。
一里ほど歩いたところで足が疲れ眼が重くなってきた、もう歩けないのか??
ハヤテは足をもぎ取られたアリの様にその場に倒れてしまった。


眼が覚めるとゲンマが自分に与えてくれたベットに自分は横たわっていた・・・
ゲンマが部屋に入って来た
「おっ!!起きたか。お前二日も寝てたよ。」
手に何か持っている。
「はい。昼ご飯な・・・起き上がれるか??
」ハヤテはあっけにとられて動けなかったが
「はい。それおかゆか何かですか??」
と自ら手を伸ばすゲンマは慎重に少し大きめのお椀をハヤテに与える。
「ほい、スプーン。見た目はただのお粥だけど、忍び特製・・・て、言うより俺が勝手に調合して作ったんだけどな。あっトマトジュースも飲めよ。」


ゲンマさんが私に??
なぜこの人はこんなにやさしいんだろう。・・・深く考えたら自分がだめになりそうだ・・・・考えるにはよして、ここは素直に食べよう。

「いただきます。」だが、
ハヤテの心はまたゲンマに傾いていったのだった。獅子おどしがまた音を立てて、溶けてたまった水を出した様だ。そして涙の粒になる。
ハヤテは知らず知らず涙を流していた。
ハヤテが泣く理由をゲンマは聞こうとはしなかった、なのに何かに悩まされる一人の男の様に頭をかかえたり何か落ち着きがない。
ハヤテは少し甘いトマトジュースをコクコクと飲んだ。
そして、ゲンマをその何もかもを見通す瞳で見つめた
「何を悩んでらっしゃるんですか??」
将棋で言えば後少しで勝てる!!流れがこっちに来ていると言うところで大手をされる様なものだろうか。
「ハヤテ・・・お前が倒れてたのは北の街道。
何が目的だ??・・・
まぁだいたい検討はつくけど、一応聞いとく。」
ハヤテはかけ布団をぎゅっと握りしめて話そうとしなかった。言おうとしない唇がいつもより潤っている、ゲンマはそんなハヤテの横顔を盗み見た。

「言えない!?」
ゲンマはハヤテの寝ているベットに上がってくる!!ハヤテは驚いて背中を壁につけて縮こまる。が、ゲンマはハヤテの腕を取って「言わないと襲っちゃうよ。」と言ってハヤテの若い唇に自分の唇を押し当てた。ハヤテはその勢いで押し倒される。
「・・・やっっヤダ!!」
ハヤテはもがくがゲンマは動じない。
スルスルとハヤテの美しい肌に触る。何もかもを吸い取る様なこのみずみずしい青年はゲンマの指に反応するもののまだゲンマを受け入れない
「やっ!!やめて。」ハヤテのうわずった声を聞いたのでゲンマは自分を抑えて
「家族に会いたいんだろ・・・・。」
その時ハヤテはゲンマの眼を見た。
「はい。会いたいです。」ハヤテは言った。
「北スラムの隣の短冊街??」ゲンマはハヤテのベットに座って一瞬真面目な顔になる。
「その端にある、小さな村楓来と言う村に私の家があります。」
「そこに家族がいる??」ゲンマは顔をすっとハヤテの方に向けて言った。
「はい。・・・・たぶん。」

「わかった。丁度そっちの方に行く任務を明日貰いに行く。そのままハヤテの家に行くから。・・・それでいいよな。」
「・・・・はい。」
立ち上がって
「ならもう今日は寝よう。・・・ちゃんと連れて行ってやるから、無茶しないで。」ゲンマはハヤテに優しく微笑む。ハヤテはそれを見て一瞬ためらうが、正直に
「はい。」っと言った。

なんだか調子が狂う。
あの人は何を考えているのか・・・私にはわからない。
あの笑忍びなのに。
私を買ったのに!!ここに縛りつけられるんだって思ってた
所有物だし。
ゲンマさんは違うらしい、あの人は私の身体だけを求めてるって訳じゃないのかも       

なんて言う甘い考えまで浮かんで来る
だけど明日分かるだろう
ゲンマさんの気持ちが。

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あきゅろす。
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