*W 「すすすすいませんでした!本当にごめんなさい!俺ってばなんてこと…っ」 「…別にもういいって。あんまり煩いと咬み殺すよ」 「えっ!いやでも…、着替えまで貸してもらって…」 沢田は自分の着ている和服を示した。 それは僕が昔着ていたもので、小さめを選んだ筈だったけど沢田にはぶかぶかすぎた。 大分きつく帯を締めているけど、それでも白い胸が顔を覗かせている。 (…なんか、心臓に悪い) 「君が地面に寝たりするから服が汚れたんだよ。今草壁が洗濯してるから」 「え…、草壁さんがいるんですか…?」 「この家の家事全般は彼がやってるから、君は余計なことしなくていい。副委員長の仕事だよ」 「はぁ…」 沢田は意味が分からないと言った表情でこちらを見てくる。 僕だって分からないよ―――どうしてこの雰囲気を心地よいと感じるかなんて。 「っていうか君さ、和服着たことないの?」 僕はわざとらしく話を変えた。 「あ、初めてです…。着方が難しくって…」 「じゃあ僕が教えてあげるよ」 そう言って沢田に近づいた。 (着こなせてない奴を見ると苛々する) すると細い肩が小さく揺れたのが見て取れた。 やっぱりまだ緊張しているらしい。 ―――いや、怖いのかな。 今まで何度も咬み殺してきたし、この華奢な身体にたくさんキズをつけてきた。 それなのに今日いきなり家に来て、心を開けを言われても無理だろう。 沢田のことをいろいろ知りたいと思っていたけど、そう簡単にいくわけない。 相手は僕に対して良い印象を持っていないかもしれない。 そう思うと少しだけ胸が痛い。 (あれ、なんで痛くなるんだ…) 「や、あの…雲雀さん!」 「…え?」 手首を掴まれて我に返る。 すると目の前には真っ赤になった沢田と、和服を脱がそうとする自分の手。 そして何より僕の視線は、ほんのり色付いた胸の突起に――― 「っ……な、君何脱いでんの…っ」 「あっ、ひどい!雲雀さんが脱がしたんじゃないですかぁ!」 「はぁ?僕が……」 ―――そう、かもしれない。 正しい着方を教える筈が、考え事に耽って無意識に脱がしていた…らしい。 (ていうか、これはやばい…。さすがに引かれ―――) その時、 「ちゃおっす」 この空気とは不釣り合いな訪問者がやってきた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |