*V
「ついたよ」
バイクのエンジンを切ってそう声をかける。
しかし後ろに乗っている筈の沢田から返事はなかった。
「ちょっと、早く降りて…」
「ひ、雲雀さん…俺…は、吐く…」
「は……はぁ!?」
思わず声が裏返った。
「ちょ、だったらその辺で出してきてよ!このままだと僕にかかる…っ」
「すいませ…っ、もう無理…ぅ」
そのまま沢田は僕のすぐ後ろでリバースし―――そうになる前にトンファーで突き放した。
すると沢田はバランスを崩してバイクからずり落ち、地面に頭をぶつけて気絶した。
(何なんだこの子…!なんで僕は楽しみとか思ってたんだ…)
…いやだけど、ちょっとは僕の所為でもあるかもしれない。
沢田が僕の荒い運転で酔っていたのは知っていた。
初めの方は出来るだけ優しく運転してたつもりだった、けど―――
(…この子がしがみ付いてくるから…だから僕は)
もっとくっついてほしくてわざと荒い運転をした。
認めたくないけど、それが真実。
何よりも群れるのが嫌いな僕が取る行動とは思えない。でも事実。
確かに僕は沢田に抱きついてほしいって―――。
(変だ、なんなのこれ。こんなの僕じゃないみたいだ)
でもまぁ今一番考えなきゃいけないことは―――、
「…こんなことろで寝て…、どうするの…」
うんうん迷った末、僕は沢田を背負って家まで運んだ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!