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□2013'バレンタイン
「甘いね」

「そ…っ、そりゃそうですよ…」

「ねぇ、もう一回してよ」

「嫌ですよ!もう無理ですって」

「いいじゃない。減るもんじゃないし」



俺は殆ど無意味な抵抗をしてみせた、が、その気になった雲雀さんを止められるわけもなく、結局2つ目のチョコを自らの口に含む。
満足そうに微笑む雲雀さんとは裏腹に納得のいかない俺は、半ば強引に顔を近づけ、ねじ込むように雲雀さんの口腔へとチョコを運んだ。
くちゅ、という舌の絡み合う音と、鼻腔を擽る甘い匂いに心なしか1つ目の時よりも羞恥が倍増した気がする。
こんなバカップルみたいな事態に何変な緊張てんだ俺!とは思いながらも、鼓動は早くなるばかり。
漸く唇が離れた頃にはもう既にチョコは溶けてなくなってしまっていた。



「こ、これでいいんですか…」

「うん。綱吉にしては頑張ったね」



ポンポンと軽く頭に手を置かれる。子供扱いされるのは今に始まったことではないが、それでもたかが学年一つ上というだけでここまで余裕に差があるのかと思うと悔しくて堪らない。
だから少しでも驚かせようとバレンタインデーの今日、手作りのチョコを持ってきたのだが…。
失敗した。学校への食べ物の持ち込みは禁止だった。何やってんだ俺。



「咬み殺されるよりこっちの方がいいでしょ?このチョコも僕宛てだったみたいだし」

「そうですけど…でもだからって口うつしとか…」



(心臓壊れるかと思った…)

未だに落ち着きを取り戻さない心臓に、心の中で文句をぶつける。しれっとした表情でどうしたのと聞いてくる雲雀さんが憎たらしい。
まさか女子が盛り上がるこのイベントで自分がこんな想いをするとは思わなかった。それは雲雀さんの傍にいる限り、何度でも味わうことになるのだろう。
それでもこの人から離れる気なんてさらさらない俺は、箱に残っている不格好なチョコを見てクスリと笑った。

(来年も再来年も、絶対俺のチョコ食べてもらうんだ)
















「なんてことありましたよね。懐かしいなぁ…」

「そうだっけ、覚えてないな」

「酷い!俺あんなに頑張ったんですよ!なのに雲雀さんは子供扱いして俺ばっかり必死で…っ、そのくせ覚えてないとか何ですかそれっ」



隣でプンスカプンスカと怒りを露わにする綱吉の手元には、相変わらずの拙いラッピングが施された小さな箱が握られていた。
初めてそれを受け取った日から―――10年経った今でも変わらない毎年の恒例行事。
覚えてないなんて嘘に決まってるのに、それを信じ込んでぎゃあぎゃあと余裕のない綱吉がまた可愛い。

僕は綱吉の手から箱を奪い取り、代わりに空になった手を掴み指先に唇を押し付けた。間抜けな声を上げる綱吉を余所に、今度はその指を軽く吸う。僕だって好きな子からこんなもの貰って悠然としていられるほど大人じゃないんだよ、そんな意味を込めて。



「な…ちょ…雲雀さ…」

「昔から変わらないね、その僕を誘惑する顔」



甘いチョコレートに負けないくらい美味しそうな表情をする綱吉に、僕の理性はぐずぐずに溶けていった。








Dopo L'avere incontrato, ogni giorno trasformato in un giorno speciale.


END


イタリアの習慣では恋人同士でプレゼントを贈り合うらしいですが、まぁ二人とも日本人だし…いいかなって←
指先にキスするのは「賞賛(褒めること)」という意味があるらしいです、へぇ。
ちなみに場所は応接室とイタリア本部のつもりでした…描写がない…
最後のイタリア語は「貴方に出逢ってから、毎日が特別な日になったの」というイタリア女性に大人気のフレーズ。長々とすいません!

ありがとうございました!


2013/2/11

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