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□可愛いだなんて見間違い
※10年後









雲雀さんが風邪を引いたと知ったのは今から3時間ほど前のこと。
いつも執務室のソファーで俺の許可なく寝るのが日課のあの人が、今日はどうしたことか昼を過ぎても姿を現さなかった。
心配になってリボーンに確認したら案の定…38度以上の高熱で寝込んでいるらしい。

(ていうかあの人も風邪引くのか…、無縁そうだけどなー…)

最近イタリアでは風邪が流行っているらしく、アジトでもマスクをしている人や咳をしている人は珍しくない。俺は至って健康だがボスなんだから気をつけろとリボーンに何度言われたことか…。



「あ、ここだ」



雲雀さんの部屋の前。
右手に果物と書類を持っている為左手でドアを叩く。俺は返事を聞く前にドアノブに手を掛け部屋に入った。



「雲雀さーん?大丈夫ですか?」

「……っ…綱吉…?」

「リボーンに聞きましたよ、雲雀さんでも風邪引くんですね。ははは」

「煩いよ…」



雲雀さんはベッドに横になった状態のまま荒い息でそう言った。
普段より余裕の無さが醸し出ている姿に、思考がイケない方へと傾いてしまいそうになるのを我慢しながら、持っていた果物を差し出す。ついでにその中から真っ赤なりんごを取り出した。



「りんご食べませんか?今むきますね」

「…なんで書類も持ってるの?まさかここで仕事するつもり?」

「え、駄目ですか?大丈夫ですよ、俺滅多に風邪とか引きませんから」

「だからって…」

「それに雲雀さんに移されるんだったら寧ろ嬉しいことです」

「……何言ってんの君…実はMだったの?」





そんな他愛のない話をしながら二人でりんごを摘む。久しぶりのほのぼのした雰囲気に俺はふわふわした気分だった。
雲雀さんも時々咳き込むようだったが思っていたほどぐでぐでではなく、あと2、3日も安静にしていれば仕事に復帰できると言っていた。


(なんかなー、雲雀さんが可愛い)


いつもの凛としていて強くて格好良い雲雀さんも勿論好きだけど、たまにはこういう弱った場面もレアで可愛い…なんて死んでも口に出しては言わないけど。

それにこの人の前だとなぜか仕事がスムーズに進むから不思議。持ってきた書類ももうそろそろ終わりを迎えそうだ。



「でも残念だな」

「え?何がですか?」



俺は意味が分からず咄嗟に聞き返した。



「もっと手とり足とり看病してくれるんだと思ってた。何て言うか…普通」

「ちょ、俺に何を求めてるんですか雲雀さん…。病人相手にそんなこと出来ませんよ…っていうか雲雀さんじゃあるまいし病人じゃなくてもそんなことしません」

「そう?もし風邪を引いたのが僕じゃなくて君だったら、僕は息が荒い君の口塞いで窒息しそうになるまでキスするけどね」

「ばっ…、な…っ何言ってんですか!もう馬鹿!」



俺は立ち上がり真っ赤になりながら反抗した、が、雲雀さんはクスクスと満足そうな笑みを浮かべている。



(何なんだよ…いっつも俺ばっかり…)



ムカムカした俺は強引に額のタオルを取り雲雀さんの肩を掴んで、腰を折っておでこにキスを落とした。

唇に伝わる熱に背筋がぶるっと震える感覚。荒い息づかいがすぐ耳元で聞こえ気持ちの高揚を促した。


暫く続いた長く熱いキスの後、ゆっくりと唇を離した俺の視線と不満そうな雲雀さんの視線が絡む。



「…なんで額なの…」

「俺にはこれが限界なんですよ!悪かったな!」

「へぇ?」



(可愛いとか何思っちゃってんの俺…いつも通り意地悪じゃん…)

俺はバサバサと適当に書類をまとめ、ドアの方へと歩みを進めた。途中で振り返り楽しそうに笑う雲雀さんを睨みつける。



「お大事に!俺はもう執務室に戻ります」

「ねぇ、綱吉。本当に風邪には気をつけなよ。すごく手厚い看病が待ってるから」



(だから俺は滅多に引かないって…)

それにこの人の看病は何をされるのか分からないから怖い。でもきっと碌でもないことばかりされる気がする…うん、気をつけなきゃ。



「あー…なんか慣れないことした所為か疲れた…」









しかしそんな思いも虚しく、嫌がる俺を余所に甘ったるい世話が降りかかってくるのは、それから2、3日後の話―――。


END


雲雀さんだったら和室かなとも思ったんですが、いや…キスするならやっぱりベッドだろう!な結論に至り一応洋室になりました。そのつもり。
風邪が流行っているようなので皆さんもお気をつけください!

ありがとうございました!


2013/1/20

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あきゅろす。
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