□2012'メリクリ
世界が幸せ一色に染まるクリスマス・イヴ。
どの店を見ても赤や緑や白で飾り付けされていて、至る所でサンタとトナカイのコスプレをした大人が子供に手を振っていた。
俺も昔はサンタはいるって信じてたな、なんてどうでもいいことを思いながら頼まれたケーキを買う。
代金を払って店を出たその時、目の前をクリスマス色らしくない何かが通り過ぎた。
「あぶなっ…って、ヒバ―ドかよ。吃驚したぁ…」
「ツナヨシ、ツナヨシ」
ヒバ―ドが俺の頭の上に乗る。
あの人以外に懐くことがあまりないヒバ―ドだから、少しだけ得した気分になった。
「…あ、そっか。お前雲雀さんと逸れちゃったの?ってことは雲雀さんもこの辺にいるんだよね…」
辺りを見渡す。しかしそれらしい人は見つけられなかった。
そもそもこんな人が渋滞している場所にいるとも思えない。
「お前どこから来たの?雲雀さんいないんだけど…」
「ツナヨシ、サムイ、ヒバリ、ヒバリ」
「…や、意味分かんないんだけど…」
(でも羨ましいよなー…。いつも雲雀さんと一緒にいるんだもん。あんなにベッタリして…)
今日のクリスマスパーティだってダメ元で誘ってみた。もちろん断られる代わりに咬み殺されたけど。
群れるのが嫌いな雲雀さんのことだから仕方ないけど、出来れば一緒に過ごしたかったなぁ…なんて思っていて、まだ諦め切れてない自分がいる。
一応プレゼントも用意してたんだけど…あの人がイベント事に興味あるわけないし…。
「一緒にケーキ食べて、プレゼントあげて、それで喜んでくれたら俺も嬉しいな…とか夢のまた夢だよね」
「ヒバリ、ヒバリ」
「ヒバ―ドはいいよなぁ…。どうせ今日も雲雀さんと一緒に過ごすんだろ?俺だってそうしたいよ!馬鹿!」
俺はヒバ―ドを頭の上から下ろして文句をぶつけた。
しかしじっと黒い瞳に見つめられて、そんな自分が一番馬鹿馬鹿しいと気付く。
(だって羨ましかったんだよ)
「ツナヨシ」
「何だよー…。早く雲雀さんのところに帰った方が―――」
「アシタ、僕ノ家ニキテ。プレゼント、アルカラ。ケーキモ、アル」
「……え?」
「来ナカッタラ、カミコロスヨ。メリークリスマス、ツナヨシ」
そう言ったかと思うと黄色い羽根を広げて飛んで行ってしまった。
残された俺は暫く茫然としていて、漸く意味を理解した頃には顔が真っ赤だった。
(…え、え…今のって…)
もしかして、もしかしなくても…雲雀さんからの…!
「ま、まじか…」
本当に?あの雲雀さんが、俺と同じ気持ちでいてくれた?
どうしよう…嬉しい。
明日は12月25日。クリスマス当日。
そんな日に一緒に過ごせるなんて…どうしよう、すごく嬉しい。
「…ていうか回りくどいよ雲雀さんー…!」
照れ隠し?言い忘れ?そんなことはどうでもいい。
とにかく明日、今年のクリスマスは一生忘れられない日になることが確定した。
「おかえり、ごくろうさま」
フラフラした飛び方で帰ってきたヒバ―ドを、人差し指の上に止める。
黄色い身体には少しだけ白い雪が積もっていた。心なしか震えている気がする。
「ごめんね、こんなこと頼んじゃって」
「…ヒバ―ドハ、イイヨナー」
「何?あの子が言ったの?」
「今日モヒバリト、イッショニ過ゴスンダロ?俺ダッテ、ソウシタイ。バカ!」
ヒバ―ドが僕をじっと見つめてくる。
その黒い瞳で射抜かれると、今回の僕の頼みごとが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
(だってどうしたらいいか分かんなかったんだよ…)
クリスマスに一緒に過ごそうなんて…そんな甘ったるいセリフを口に出来るほど僕も大人じゃない。
だけどあの子の傍にいたかった。ただそれだけ。
「…明日が待ち遠しいよ」
とりあえず明日、僕にとってもあの子にとっても、一生忘れられない日にしてみせる。
Merry Christmas!!
END
多分初?ヒバ―ドが出てきました。キューピット役です(笑)
お身体に気をつけて楽しいクリスマスをお過ごしください。
ありがとうございました!
2012/12/24
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