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■最後の願い
※10年後
※死ネタ
※パラレルワールド














敵のボスが言うには、俺たちが戦っているこの世界の他にも数えられないほど多くの異世界が存在するらしい。
いわゆるパラレルワールドっていうやつで、それを自由に行き来できるのが俺達の宿敵である白蘭だ。



だけどもう、無理かもしれない―――そう思い始めている自分が心のどこかにいる。






「ボス!こちらは大丈夫ですので早く非難を!」

「俺だけ逃げるなんて出来ないよ!獄寺君達と一緒に闘って―――」

「貴方が強いのは十分に分かっています!だからこそ貴方が死んでしまったらそれこそ終わりなんです」


それだけ言い残すと獄寺君達は再び血の雨の中に戻っていった。
山本もお兄さんも、骸もあの泣き虫だったランボも皆、この世界の為に命を賭けて闘っている。







たった数カ月でこの世界は血の海と化した。
全ては突然現れた白髪の男と、彼に従う6人の人間によって。
毎日たくさんの人が死んでいって、俺も大切な人やものをたくさん失った。
家族も、友達も、町も、何もかも全部…。







皆必死に闘っているのに、それに比べて俺は…どうしてこんなに無力なんだろう。

これ以上大切な人を失いたくないのに、ボスである俺が一番頑張らなきゃいけないのに、





なのに俺は―――





「早く行くよ。ここは危ない」

「…雲雀さん」

「全く、最後まで君の面倒を見ることになるなんてね。門外顧問も大変だよ」


雲雀さんは俺の手首を掴んで、城の中へ促そうとする。
だけど俺はそんなことはどうでもよくて、たった今発せられた言葉が頭に焼きついて離れなかった。




(『最後』…って、もしかして雲雀さん…)




「…もう諦めてるんですか?」

「え?」

「この世界はもう助からないって、そう思ってるんですか?」

「…綱吉…」



俺は涙ぐんだ声で質問を投げつけた。

頬を水滴が伝う感触がして、本当に泣いているのだと気付いたのは雲雀さんに抱き締められてからだった。



「そんなことないよ…、例えどんなに多くの犠牲を出したとしても、君だけは絶対に守ると決めたんだ」





戦いを好む雲雀さんがどうして此処にいるのか―――その意味がやっと分かった気がした。

誰よりも優しくて、強くて、格好よくて、俺を想ってくれる人。



(俺も…貴方だけは失いたくないんです)



「…俺が弱いから…っ、頼りなくて皆を守ることが出来ないから、だからこんなことに…っ」


俺はわあわあ泣いて、溜まっていた不安と後悔を吐き出した。


「俺の所為で…、ひっく…、皆がっ…」

「君の所為じゃないよ。僕達は誰も悪くないんだから」

「でも、こんなに貴方が好きなのにっ…、ずっと一緒にいたいのに…!」













いつかこんな会話をしたことがあった。
あれはまだ平和で、こんなことになるなんて考えもしなかった頃。




『よくこの世界とは違う世界があるって言いますけど、俺達どうなってるんでしょうね』



『さぁ、どうだろうね』



『俺と雲雀さんが出逢ってない世界もあったりして…、…って言っても想像出来ないな。こんなに好きなんですもん』



『…よく分からないけど、多分ないんじゃない。君は絶対僕に恋してるよ』













こんな思いをするくらいなら、出逢わなければ良かった。
出逢わなければ、誰かを失う事を恐れて俺はこんなに弱くならなかったかもしれない。

人は守るものが出来ると弱くなるっていう言葉は本当だったんだ。






「…雲雀さん、一緒に死にませんか」


「―――綱吉?」




(貴方を失うなんて、そんなの耐えられないんです)

今ここで抱き合うことを止めてしまったら、もしかしたら離れ離れになってもう会えないかもしれない。


そうなるよりだったら今一緒に逝った方が楽なのではないだろうか。




「…諦めてるのは君の方だったね」

「…死ぬなら貴方と一緒がいいんです…」




さっき城の外から獄寺君や山本の叫び声が聞こえた。
持ち前の超直感が勝敗がついたことを知らせてくれる。

勿論、どちらが勝ったのかも。




雲雀さんは俺をしっかりと見つめた後、ふわりと優しく笑った。



「僕も君と一緒なら本望だね」

「雲雀さん…」












(他の世界ではどんな結末を迎えたんだろう)




(俺達は一緒に居る為にはこの方法しかなかったけど)




(何処かに幸せに暮らしている俺達がいたらいいな)







そう思うのと同時に2発の銃声が耳を劈いて、赤い雨が降り注いだ。


END


助からなかった世界でのツナと雲雀さんの最後でした。
漫画の流れ的に暗い話にしかなりませんでした←私の書力の問題ですね(笑)

最近■が多いので□もちゃんとupしたいです(`・ω・´)


ありがとうございました!


2012/11/3

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