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■眠り姫
※10年後
※死ネタ









『雲雀さん!俺、雲雀さんが大好きです!』


『…何いきなり』


『誰よりも好きです!10年後も20年後も、ずっと一緒にいたいです』









君がそう言ったのは昨日の夜だった。

花が綻ぶような笑顔でそう告白した君は、何処か泣きそうな表情も隠し持っていた。





そして今僕の前にいる君は、棺桶の中で眠っている。

本来ならば仮死状態になる筈だった計画は脆くも崩れ去り、弾丸は君に命中した。

それは死を意味していて、実際に目の前の君は少しも動かなくて。

僕の世界は光を無くした。





「雲雀、別れを言わなくていいのか」
「…やめてよ赤ん坊、僕はそんな律儀なことはしない」
「そう言うわりには泣きそうな顔してるぞ」
「別に…、ただ苛々してるだけだよ」





ただ一つ、君に言いたいことがあるとすれば―――、






嘘吐き。






君のことを信じていなかったわけじゃない。
でも宣言したことはちゃんと守らなきゃ、ね。


僕は隠し事や嘘が嫌いだ。
いくら君でも昨日の今日で約束を破るなんて、見逃せるわけないじゃない。






ねぇ、早く起きてよ。



起きて、約束を破った罰で咬み殺してあげるから。



ねぇ、



綱吉―――



僕の名前を呼んでよ。






「俺らは一度ここを離れるぞ。別れを言うなら誰もいない今だ」
「…なら早く行ってよ」
「―――雲雀、泣きたかったら泣いてもいいんだぞ」


だから、泣かないよ。



僕は誰もいなくなった空間で、棺桶の中で眠る君の髪を撫でた。

初めて会った時から、10年前から全然変わらない柔らかい髪質。
相変わらずの透き通るような白い肌。
何度も触れ合った懐かしい唇。
よく涙を流していた、もう開かない瞳―――。





正直、棺桶の中で眠る綱吉は綺麗だった。
深い深い森の中にある古い城で、ずっと誰かを待っているような―――そんな安らかな寝顔。




「そういえば…眠れる森の美女は、キスで目を覚ますんだっけ」




お姫様は魔法をかけられて深い眠りに落ちて、

100年後現れた王子様のキスで目覚める。


じゃあこの場合は君がお姫様だね。
もう二度と起きないお姫様。









『10年後も20年後も、ずっと一緒にいたいです』


『…誓ったね』


『はい。―――俺は一生雲雀さんの傍にいます』









嘘、は嫌いだけど君のことは―――。



「それは僕の台詞だよ」




ごめんね、僕は100年も待てないから……。


僕は涙を一粒流して、最後のキスをした。








「ありがとう」








さようなら











僕の愛した人―――。


END


SEKA/I NO OWA/RIの眠り姫を聞いてたら浮かんできたので、ついでに眠れる森の美女もMixしました。
王子様とお姫様が再び出逢うのは、生まれ変わった時でしょうね…。

そろそろ死ネタは卒業したいです(汗)

ありがとうございました!


2012/10/01

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