□魔法のキス ※10年後 イタリア本部の執務室で毎日大量の資料とにらめっこしている綱吉は、こっそり仕事を抜け出して廊下を歩いていた。 「はぁ疲れたー…。もう嫌だー…」 座ってばかりの所為か異常に腰と背中が痛い。 いつもなら雲雀が強烈なマッサージをしてくれるが、今はあの大好きな手はない。 「…まだ帰ってこないのかな」 雲雀が仕事で日本に旅立ってから早1ヶ月。 3日に一回ほど電話でやり取りをしているが、遠く離れた声だけじゃ満足できるわけもなくて。 心配事や不安はどんどん溜まっていく。 「昨日電話したけど、またしていいかな…」 (だって昨日は眠いとか言ってすぐ切られちゃったし。別にいいよね) 綱吉は携帯を取り出して、雲雀の番号を探した。 通話ボタンを押してかけようとしたその時―――、 「あ、10代目!」 「ご、ごご獄寺君っ!?」 獄寺君とばったり会った。 「あれ、どうしたんすか?相変わらず苛々しながら探してたっすよ」 「あ、リボーンにばれたんだ…。ちょっと息抜きをね…」 「誰かに電話するところだったんですか?」 「うん、雲雀さんに」 そう言うと獄寺はバツが悪そうな顔をして、あぁそうかと呟いた。 「やっぱ、心配なんですよね…」 「うん、さすがに1ヶ月も会えないとね。仕事は順調に進んでるって言ってたけど、身体壊してないかとかちゃんと食べてるかとか、どうしても考えちゃって」 「あいつなら食わなくても生きていけますよ」 「ちょっ、獄寺君!」 確かに食しているところはあまり見ない雲雀さんだけど、あれでも結構大食いだ。 睡眠はちゃんと取ってそうだけど。 「とくかくお仕事頑張ってくださ―――あっ、おい野球バカ!探したぞ!」 少し離れたところに山本を見つけた。 咄嗟に獄寺の顔色が豹変する。 「ん?おぉ獄寺―!どこにいたんだ?」 「てめぇがどこ行ってたんだよ!ったく…、じゃあ10代目、失礼します!」 「頑張ってね」 獄寺は山本のところに行くと、一発殴ってから歩き始めた。 (いいなぁ。俺も早く雲雀さんに会いたい…) 再び携帯を取り出して今度こそ電話をかける。 5コール目でやっと呼び出し音が途絶えた。 『…はい』 「雲雀さん!こんにちは」 『…なんで電話なんかかけてるの』 「あ、仕事中ですよね、そっか…。すいません。ただなんとなく声聞きたいなぁって思って…」 『ふぅん…』 声から面倒くささが十分伝わってくる。 でも昨日みたいに切られまいと、懸命に話題を探した。 「えっと…んー…―――」 『綱吉、どうしたの』 (どうしよう…なんか泣きそう…) 雲雀さんの声を聞いてたらなぜか悲しくなってきて、涙が出そうになった。 多分獄寺君と山本を見たからかもしれない。 『つな―――』 「会いたいです、雲雀さん…」 無意識にそう発していた。 「俺だって獄寺君達みたいに会って話したいです…、並んで歩きたいです。…貴方に触れたいです」 『綱吉…』 「いつになったら帰ってくるんですか…っ」 気付くと本当に泣いていた。 電話の相手に悟られないように、必死に嗚咽を飲み込んだ。 『泣いてるの?』 「泣いてなんかいません!」 『…君、今仕事さぼってるよね』 「なっ、さぼってませんよ!ちょっと息抜きしてるだけで…」 「それをさぼりって言うんだよ。執務室にいないし…随分探したよ」 「え…?―――ひゃっ」 突然後ろから抱きしめられた。 懐かしい匂いと突然の出来事に、思わず間抜けな声が上がった。 「やっと見つけた」 「ひ、雲雀さん…?」 顔だけ振り向くと、ずっと会いたかった人が自分を抱き竦めていた。 その姿を確認すると涙腺は完全に壊れて、止めどなく涙が溢れてきた。 「な、なんでぇ…うぇ…っ」 「あ、やっぱり聞いてないんだ。今日帰ってくるって」 「は……?そんなの知らな…」 「じゃあ赤ん坊が忠犬達に黙ってろって言ったんじゃない。理由なんてどうでもいいけど」 「う、うぇぇぇ…。ひば、りさん会いたかったぁぁ…っ」 俺は向き直って雲雀さんに抱きついた。 いつもならスーツにしわが出来るとか言って、怒る雲雀さんだけど今日は、 「ただいま」 「おかえりなさい!」 優しく笑ってキスをしてくれた。 1ヶ月ぶりに触れる大好きな人は、疲れも痛みも全て消し去ってくれる魔法のようだった。 END 獄寺君の「苛々しながら探してた」っていうのは、雲雀さんがツナを探してたことです。 リボーンはツナを吃驚させたくて黙ってました(笑) 構成と感情移入がぐだぐだすぎる… ありがとうございました! 2012/09/28 [*前へ][次へ#] [戻る] |