小説(戦国創作)
※飛翔(コタ官/3)
続きです。ぬるーい裏なのでお気をつけください!
官兵衛が徳川に呼ばれ江戸城の再建に携わり始めてから一ヶ月。再建が進んだ江戸城の屋根に黒い影があった。
伝説の忍、風魔小太郎である。
普段であれば北条の使者として徳川からは客人のような扱いを受ける小太郎だったが、今日は違った。
一人の忍として、そして一人の男として徳川を偵察に来たのである。主からの命令ではないが、どうしても小太郎の胸の中には消えない違和感があった。
この一月、小太郎は北条の使者として主から官兵衛への書状を運んできたが、一度として官兵衛本人には会っていなかった。
いつも広間に通され官兵衛を待っていたが、決まって現れるのは官兵衛ではなく徳川家康だった。
「いや〜!風魔!すまんな。今日も官兵衛は仕事があってな。」
小太郎は黙って少しだけ頷く。
「官兵衛が北条殿によろしく、と言っていたぞ!そう北条殿に伝えてくれ!」
いつもこのやりとりだった。きちんと返事の書状は返ってくるが、その書状の字もどこか官兵衛のものとは違う。
いよいよ怪しくなり、小太郎は単身夜の江戸城へ来たのだった。
屋根裏に忍び込み天井を移動する。
たしか徳川の自室はこの城の最上部にあるはずだった。
この辺りだろうか、と小太郎が警戒すると下からなにやら人の声がした。
一人は徳川。そして聞こえてきたもう一つの声に小太郎は身を固くした。
「…なぜなんだっ!官兵衛!なぜワシではダメなんだっ…!」
「…っんん!っゴホッ!やっ!やめてくれっ!ごんげ…っんあ!」
小太郎は音をたてないように天井の板を一枚ずらした。その隙間から見えたものは小太郎の想像を越えていた。
そこにいたのは紛れもなく徳川と官兵衛の二人であったが、徳川の着物は崩れていた。
そして、官兵衛は着物を着ておらず、その手には見慣れた枷とそれに繋がる鎖が見えた。しかし、その先は馴染みの鉄球ではなく天井の梁であった。
「…なぜっ!なぜだっ!そんなに三成がいいのか?それとも刑部か?」
「違っ…っ!やめっ…っあああ!」
そしてなによりも、徳川が官兵衛の秘部に己の一物を突き立てていたことだった。
「なぜワシを受け入れない!ワシはこんなにも官兵衛を愛しているのに!」
「…っいやじゃ!ご、んげん!もうっ…これ以上はっ!いやじゃ…っあああ!」
官兵衛が徳川に犯されているのだと判断した瞬間小太郎は音もなく天井裏から飛び降り徳川を蹴り飛ばした。
そして間髪入れずに官兵衛を繋いでいた鎖を断ち切った。
ドサリ、と床に崩れ落ちた官兵衛を小太郎は優しく、でも力強く抱き締めた。
「っく!…お前は、風魔…っ!」
「風切羽…っ!?どうしてお前さんがここにっ!」
『遅くなってすみませんでした。もっと早く気づいていれば。』
小太郎は官兵衛にだけ聞こえるように官兵衛の耳へ風を送り込んだ。
それを聞いた官兵衛は堰が切れたように泣き出した。
「風切羽っ!しょっ、小生はぁぁぁ〜っ!」
小太郎はそんな官兵衛の頭を優しく撫でる。その視界の先でゆらりと家康が立ち上がるのが見えた。
「ははっ。なるほど…。そういうことか。官兵衛の想い人はお前か、風魔。」
そういう家康の顔には怒りも悲しみも、感情というものが全く見えなかった。
すると、それを聞いた官兵衛が焦ったように叫んだ。
「…っ!違う!権現っ!風切羽は関係ないんじゃ!」
「はっ。いくらお前が否定しようともワシには分かる。そうか…お前だったのか…。」
壊れたようにブツブツと呟きながら歩き回る家康を無視し、小太郎は再び官兵衛の耳に風を送り込む。
『官兵衛さん。まだ立てますか?』
「…あぁ。そう長くは持つか分からないが。」
小太郎が官兵衛を抱え、天井裏へ飛び上がろうとしたとき、家康が二人に飛びかかった。
小太郎は素早く刀を抜き取り家康の拳を受け止める。
家康の顔には貼り付けたような笑顔があった。
「どうやらワシは無駄な時間を費やしてしまったようだ!いや〜、ワシはてっきり官兵衛の想い人は三成か刑部だと思っていたからなぁ〜。官兵衛を振り向かせるには二人を殺すしかないと思って、関ヶ原の戦を起こしたのだが…。…まさか、風魔とは。」
「だからっ!風切羽は関係無いと…っ!」
「…風魔。お前を殺せば、官兵衛はワシだけを見てくれるだろうか?」
にらみ合いながら二人は互いの得物を構える。
「…っ風魔ぁぁぁぁあぁぁぁぁあっ!」
勝負は驚くほど一瞬だった。冷静さを欠き、常軌を逸していた家康は普段の戦ぶりとはうってかわってスキだらけだった。
家康の血がついた刀を拭い、小太郎は再び官兵衛を抱え直す。
『…帰りましょう。官兵衛さん。小田原へ。』
あとがき→
やっと次の話で完結できそうです。
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!