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小説(戦国創作)
はじまり(コタ官/1)


「風魔ぁ〜!風魔は居らぬのかぁ〜!」


小太郎は主である北条氏政の前に音もなく舞い降りた。


「おぉ!風魔!おったのか!お主に紹介したい方がいるのじゃ!」


そう言い、廊下を歩いていく主の後ろを小太郎がついていくと、たどり着いたのは客人をもてなす際に使われる大広間だった。


「官兵衛殿!お待たせして申し訳ない!ほれっ!こやつが風魔じゃ。」


主が「官兵衛殿」と呼ぶ目の前の男には小太郎も見覚えがあった。

黒田官兵衛。元は豊臣に仕える軍師だったが、天下を狙う野望をあからさまに出していたために九州の坑道へ追放された男だ。

官兵衛は豊臣時代の小田原攻めの際、戦ではなく「無血開城」という道を選んだ。それ以来、主は官兵衛に恩を感じているらしかった。


「おぉ。お前さんが!あの伝説の忍びかぁ。小田原攻めのときはお目にかかれんかったからなぁ。」


官兵衛はその豪快そうな性格とは裏腹に、手首には手枷をはめられその枷には大きな鉄球がついていた。

それには大谷吉継の呪術がかかっていて鍵を使わなければ外せないらしい。


「官兵衛殿!しばらくはこの風魔を世話役として付けますわい。じゃから、不便があれば何なりと風魔にお申し付けくだされ!」


「でっ、伝説の忍をっ!?そんな、小生にはもったいない!」


「何をおっしゃるか、官兵衛殿!官兵衛殿は我ら北条の恩人。これでも足りないくらいじゃ!では風魔!官兵衛殿に従うのじゃぞ!」






挨拶を済ませると官兵衛は主が用意した部屋に通された。


「風切羽…。いるのか…?」



「風切羽」と呼ばれたことなどなかったがおそらく自分のことだろうと思い、小太郎は官兵衛の前に舞い降りる。



「うぉっ!本当に音もなくって感じだな。」



官兵衛は感心したようにしていたが、しばらくして急に真面目な顔になって小太郎に言った。



「風切羽。早速で悪いんだが、一つ頼まれてくれんかね?」



小太郎はわずかに頷き返す。



「…おそらく近々この小田原の周辺をかぎまわるような輩が現れると思う。そういう輩を見つけたらあまり相手を怒らせずに、追い払って欲しいんだ。それから、小生がここにいることはなるべく外部に漏れないようにしたい。」



小太郎には官兵衛が一体何を危惧しているのか分からなかった。しかし、それも主が言うことを聞けと言った官兵衛の命令ならば、と小太郎はまた空へと消えた。







小太郎が官兵衛から妙な命令を受けてから数日後。小田原には確かな異変が起き始めていた。

普段は小田原の周辺にはほとんど現れない忍の姿をよく見掛けるようになった。もちろん、官兵衛からの命令に従い小太郎は、その忍たちには丁重にお帰りいただいた。

さすがにおかしいと感じ始めた小太郎は官兵衛の周辺について探ることにした。

まず、手始めに官兵衛のことをよく知っている主に話を聞くことにした。





「…なぬ?官兵衛殿が小田原に来た理由じゃと?……それがわしにもよく分からないんじゃ。官兵衛殿が小田原に来る前日に急に文が届いてなぁ。数日でいいから留め置いてほしいとあったんじゃ。」



懇意にしている主にも言えぬ理由。小太郎は手っ取り早く本人に聞くことにした。



「…小生がここに来た理由?…それは答えんといけないかね…?」



小太郎は紙を取りだし、サラサラと書き付けていく。



『ここニ、三日小田原の周辺を忍がかぎまわっています。もちろん命令通り追い払いました。が、そろそろ説明いただけませんか?このままでは、貴方だけでなく北条にも危険が及ぶ可能性があります。』


「…悪い。それだけは言えないんだ。だが、安心してくれ。お前さんが危惧するようなことにはならんようにする。小生は北条殿に世話になりすぎた。」


『………。』



二人の間に重い空気が流れはじめたとき、部屋の外から小姓の声がした。



「黒田様。北条様がお呼びになられております。」


「…風切羽。悪いな。この話はこれでお仕舞いだ。」



小太郎はまだ気が付けなかった。このときの官兵衛の哀しそうな様子にも、官兵衛が抱えているものも。





→あとがき
続きます、たぶんww
文章力については訓練していきますので温かく見守っていただければ幸いです。

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あきゅろす。
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