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*Novel*
栗鹿の子みたいに甘い気持ちになれないの(PM)
「鹿の子ってさ、素直じゃないよね」

「…は?何よいきなり」

椅子にもたれ掛かりながら、クスクスと笑いを立ている

「いや、OJもそう言ってるよ。もっと素直になればいいのにって」

食べていた栗鹿の子を飲み込むために、冷めかけたお茶を飲んでふぅ、と一息ついたあと、
「余計なお世話よ。悪かったわね、素直じゃなくて」

ふんっ、とそっぽを向く。

「ほら、素直じゃない。もっと可愛く言えないの?」

「可愛くって何よ、私がいきなりつよしくぅんなんて言ったらアンタ引くでしょ?」

「う、うんまぁね」

一瞬息を詰まらせた。
確かに鹿の子がそんな風に自分を呼んだら鳥肌が立つどころではない。

「うーん…まぁ、何て言うかー…ぶりっ子風にじゃなくて、もっとこうミミとニャミみたいに…」

次の言葉を繋ぐ前にドンッと机を叩く音がした。

「また、私と誰かを比較するっ…。アンタがそんなだから私は素直じゃないのっ!」

え…?
「ちょ、ま、鹿の子!?」

…もしかして、怒らせた?
確かにやりすぎかもしれない。
恋人同士なのに、彼女と誰かを比較するのって、聞いてて良い事じゃないし。
むしろ、悲しい、というか、嫌、だよな。

「は〜ぁっ…何やってんだか」

自分に呆れた。
心がイガイガする。
申し訳ない気持ちと、あと、なんでもっと鹿の子の事考えてあげれなかったんだろうって気持ちが、他にももっと沢山あるかも。
で、それが混ざってイガイガする。

自分の馬鹿野郎"

そう何度も呟いた。




「もーっばかばかばかばか!!」

涙を流しながら私は走っていた。
途中で何度も転んだ。でも走った。
「ばか」って単語を何度も叫びながら。

「っと、お、鹿の子?泣いてんのか?」

横から誰かの声がした。自然に体が止まった。

「っはぁ、ろく?」

呆然と突き立ってる侍がいた。

「大丈夫か?怪我してるみたいだけど」

「へ、あ、そういえば、足が痛い」

ずっと泣きながら走ってたから、痛みを覚えなかったのだろう。
六に話しかけられて、ようやく感覚を受け止める事ができたのかもしれない。

「うわ、ひどく擦り剥けてんぞ、血も止まってねーし」

何回も転んだせいか、ものすごく傷口が開いて汚れていた。

「いたい…」

「だろうな」

タイツは破けて血で赤く染まっている。

「こっから紫ん家近いし、いくか。よっ、とぃ」

体が宙に浮く感じがした。

「……はぇ」

間抜けな声を出して、自分が今どういう状況なのかが分かった

『お姫様抱っこ』

「な、ちっ、ちょちょちょちょちょっと!あ、あーた!ろく!何してんのよっ!」

あまりにも驚いて、舌が回らなかった

「日本語喋れよ、見て分かんだろ」

「な、っ、歩けるし!歩けるからっ!おろしてっ、降ろしなさい!」

顔を真っ赤にして足をばたつかせる。
その度、膝が陣痛する。

「こんなボロボロの足してるくせに暴れるな落ちる。今度は尻擦り剥くぞ」

「じゃせめておぶりなさいよ!なんでこんな、ぁあぁ」

「おぶると、お前の胸が背中に当たりそうになるんだっつーに」

はぁ、と溜息交じりの言葉を発する。

「なっ、〜〜〜っ!わ、わかったわよっ、その代わり、変なトコ触ったら容赦しないわよ!」

まだ顔は赤いまま、早口で喋った。

「わーってるって。そこまで破廉恥な事はしねーよ」

「……」

無言のままだけど、胸の鼓動は早まるばかりだった。
つよしにも、された事のない初めての経験だったから。





「おやまぁ、どうしたんだい。そんなボロボロなお嬢様を抱えて」

まぁまぁ、と笑いながら歩いてくる。

「ちょっと拾った」

「言い方が悪い!」

「とりあえず、救急箱救急箱…、あぁ、アンタ達は居間で座ってな」

「へいへい」

紫の家は何度も来た事がある。
ほぼ毎日、自分の家のように感じて、
そこで、六に会ったり、つよしに会ったり、
でも初めて会った時は、OJの方だったっけ。

「ほれ鹿の子、傷口見せて」

救急箱を抱えた紫がパタパタと走ってきた。

「んー…」

少しためらいながら足を出す。


「うにゃっ!」

消毒液の混ざったガーゼを傷口に当てられて、思わず変な声を出してしまった。

「派手に転んだもんだねぇ、一体何したらこんなになるんだか」

ちょいちょいと傷口にガーゼを当てられる度、「ひっ」とか「たっ」とか言いながら六の袖を握り締めていた。

「終わったよ」

「痛、かった…」

「そりゃあそこまで派手な傷ならしみるだろうよ。着物の裾は延びるし」

「な、ホントに洒落にならないくらい痛かったのよ…!」

「鹿の子は可愛いわね」

紫がクスクス笑いながら私の頭を撫でる。



ドタドタと大きな足音を立てながら走っていた。

「紫さーん!鹿の子しら…」

「あら、つよし。鹿の子ならここでくつろいでるわよ」

ホッと胸を撫で下ろす。
紫さんの指す方向には、確かにくつろいでる鹿の子が見えた。
…けど

「あ、つよし」

「ん、よぉ。久しぶりだな」

ちょ、え?
何で鹿の子が六の足の上に座って、え!?

「ちょ、ちょちょ、え?何で?」

「どうしたのよ」

いや、おかしいって!

「なんで六の上に座ってるわけさっ!?」

ビシッと指を差す。

「んー…座布団代り」

「残念だったねえ、おいしいトコ全部六に取られて」

〜〜っ!

「と、ともかく!浮気ダメ!絶対!」

顔を真っ赤にしながら大声で叫んだ。

「うわき?」

六が首を傾げる。
と、同時に鹿の子を後ろから抱きしめる。

「なっ、何よ。あつい!何よっ」

鹿の子は噴火寸前の火山のように顔を真っ赤にする。
その時、ちょっとイラッと来た。
なにかが切れた音がした。

「ろくぅぅううぅぅ!!何抜かしとんじゃこるぁあっ!」

六に向かって頭突き。
ドスッといい音がした。

「なっ、……チッ」

ギャーギャーと騒がしく、争う大人気ない二人。

「鹿の子は人気者ねぇ」

「何やってんだが、まったくわかんない。あの馬鹿たち」

「まぁでも…兄さん達?騒ぐならウチでやらないで、」

ボキッと音がする。

「外でやってもらおうか?」

「ひぇえ…」

鬼に似た、とてつもなく恐ろしい笑みを浮かべる。



「何が起こってるんだか…」********************************************
初のポップンです。
DJつよし⇒鹿の子←六
的な小説。だと思います・・・

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