*Novel*
素直になれない流れ星(PM)
「ナカジー!一緒に帰ろー。」
まただ。
授業終了のチャイムが鳴るたび『帰ろー』と笑顔で飛び込んでくる。
鬱陶しいったらありゃしない。
断ったってついてくるし、「ふざけんな」と怒ってもついてくる。
コイツの辞書には諦める゛という言葉がないのか。
ないならば俺がその辞書全部書き直してやる。常識人と同じような言葉をたくさん入れてやる。
…なんて事ができれば世の中平和だろうな。
「ナカジってばー」
ああもう、ベタベタすんな。
「そのナカジって呼び方やめろ」
「え、えぇ?じゃあなんて呼べばいいのさ。皆ナカジって呼んでるじゃん?」
いくら厳しく言ったって、コイツには通用しない。
「中島。苗字で呼べ」
「中島かあ、4文字って面倒臭い。ナカジでいいでしょ?そんなに変わんないし、俺ナカジって呼び方に慣れちゃったからさー」
そんなに変わんないと思ってるなら中島でいいだろ。
はぁ、と数十回目の溜息をついた。
コイツと付き合ってると、ロクな事がない。疲れるだけだ。
「ほらー帰ろうよー」
と、俺の手を引っ張る。
それだけで、鳥肌が立ってきた。
「触るな。気色悪い」
「ナカジってば、怒ってばかりじゃなくて、もっと笑わなきゃ。そのうち一生笑えなくなっちゃうぞー」
ニシシ、と笑いながら腕を頭の後ろで組む。
余計なお世話だっつの。一生笑えなくったって俺には関係ねえ。
「まだお前ら教室に居たのか、早く帰れよー、門閉めるぞ」
英語担当の教師が教室に入ってくる。
「ほらー、早く帰ろ」
今日も仕方なく一緒に帰ることに。
何時になったらこの空間から逃げ出せるんだ。
神様がヒヒヒヒヒと笑ってる姿が目に浮かぶ。[newpage]
「あ、ナカジー夕焼けキレイだよー!ほらほらっ」
「う、ぁっ」
目をキラキラさせながら手を引っ張る。
触るなっつっただろ。
「うひょー。まぶしー」
「はぁ、お前は悩みが無さそうでいいな」
ふと、口から出た。何言ってるんだ俺は。
ってか、コイツに話しかけるつもり一生なかったのに。
「んー?あるよ。」
「どーせ今日の夕飯何がいいかなーとかそんな事だろ」
話を続けるつもりはなかったのに、何故か勝手に口が動く。
「そんなんじゃないよ。夕飯は母ちゃんが勝手に決めるもん」
「じゃあ、何だよ」
「ナカジが、いつになったら素直になってくれるのかなーとか」
………
「は?」
聞き取れなくはなかったが、この言葉は明らかに言い間違いだろう。
「ナカジがいつになったら素直になってくれるのか!これが俺の悩み」
な、意味分からん
「俺は何時でも素直だぞ」
自分ではそう思ってるつもりだ。
「ふーん、でもナカジ、嫌だ嫌だ言っていつも一緒に帰ってくれてるじゃん」
「それはお前が勝手についてきてるだけだろ」
「んー…そうなのかな」
それ以外に何があるってんだ。
「でも、ナカジって面白いね」
「は?俺駄洒落とかギャグとか言った覚えないぞ」
「はははっ。そこが面白いんだってば」
コイツの感覚はよく分からん[newpage]
気が付けば、外は真っ暗で綺麗に丸を描いた満月が出ていた。星も数えきれないほど。
そういえば今日、天気予報で流星群…―――
よし、流れてきたら『コイツがいい加減俺から離れてますように』と何回も祈ろう。
「うっひゃあー真っ暗。あ、流れ星!流れ星だよナカジ!!」
子供みたいにキャッキャとはしゃぐ。
「よし!ナカジが素直になってくれますよーに、ナカジが素直に…」
「って何お願いしてんだ。おい」
ぐいっ、と服のすそを掴む。
「おっと、いーじゃん。ナカジに素直になってもらいたいんだもん」
何がもらいたいんだもんだ。
「さてと、行こっか。もう真っ暗だしねー」
満足気な顔をして歩いていく。
「ナカジーはやくー」
「…分かってるっつの」
自分がムカつく。
アイツの悩みに少し心臓を弾ませた自分がムカつく。*************************************************
タロナカ小説…のはず
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