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Oasis

ドアを閉めた後、いつもより足早に、宮殿の廊下を走った。


空はもう夕焼け空で、今日も一日の終わりが来たんだなと心の中で感じた。



綱吉はそんな空の移り変わりを一瞥した後、ある一定のところまで来たら、ぱたと足をとめ大げさといってもいいほどの大きなため息をつき、床にしゃがみこんだ。


「あ゛〜〜〜〜〜〜っ!!」



頭を抱え込んだままそう叫んだ綱吉は先ほどの白蘭の部屋での出来事を思い返していた。


―俺、きちんと白蘭に言えたよなァ…?

  

『アイツには隙をみせてはいけないよ』



ふとある人の声が頭の中によみがえりそのまま肌が粟立ちそうになった。



あの人の言うとおりにしないと俺どうなるかわかんないからなー…


ま。どうなるかっていうか…


咬み殺されるだけなんだけどっ


ほんと彼に逆らうと恐ろしい…




…っや。


白蘭に逆らっても俺の命の保証はないんだけどさっ



なんかそれ以上にあの人怖いんだよね…



ツナもあの人のこと警戒してるみたいだし…



まぁ…いい人なんだけど…




頭のなかでいろいろと思いを巡らせたあと、綱吉はスッと立って前を見ずに歩き始めた。



ドン  ずさっ



「わっ!」




案の定前を見ずにいきなり歩き始めた綱吉であったので、前から歩いてきた人と正面衝突した末、綱吉のほうが圧倒的に体積が軽かったため後ろに弾き飛ばされた。



「あいてててて…。す、すみませ…

「ちょっと。どこ見て歩いてんの。相変わらず君はどんくさいね」



前から歩いてきた人物は綱吉の顔をあきれ顔で見たあと、すっと手をさしのべようとした。


「っな!? ひ、雲雀さんっ!?」


綱吉は大きな目を見開き、上ずった声で手をさしのべた人物の名を呼んだ。


「ど、どうして!?どうして。ここに…


綱吉が言い終わる前に雲雀は綱吉の手を取って、綱吉を立ち上がらせ、次のように淡々と答えた。



「どうしてって…、ここは僕の仕事場なんだけど」



当たり前のような答えに綱吉は茫然としながらもあえて質問を続けた。


「でもっ、今日は出張でいないって、白蘭が言ってたし…



“白蘭”という単語が出た瞬間彼の顔はいつもより険しくなり、雰囲気がくろくなった。



「君。また白蘭のところに行ってきたの。アイツには気をつけろっていつも言ってるじゃない。」




綱吉はしまったと思いながらも、どうすることもできないので、とりあえず言い訳だけしとこうと口を開いた。



「や、でもっ、そんなに話とかしてませんし、雲雀さんのいうように隙なんて見せてませんからっ」



綱吉の必死の言い訳の甲斐があったのか、雲雀は珍しく怒ることはなかった。


だがその代り、綱吉をギュッと抱きしめ、消え入りそうな声でそっとつぶやいた。


「僕のいない間にアイツのそばに寄らないで。」



そういって雲雀は綱吉の肩に顔をうずめた。


このような雲雀を見たのは、はじめてだったので、綱吉はとまどっていたが、妙に雲雀のことを愛しく感じてしまった。



―雲雀さん。


雲雀恭弥。


彼は元ボンゴレ国の王ジョットの側近の息子で、俺たち兄弟の幼馴染みたいな存在。


昔から強くって、群れてるやつらは容赦なく咬み殺していた。



今じゃこの国の1、2を争う強さを誇る人物にもなっている。





でも俺たち兄弟とは親同士のつながりもあってか割と仲よかったんだよな。



昔からのよしみとあって、彼のお仕事は俺たち兄弟の護衛。


ツナはそんなのいらないっていうだろうけど。


俺は雲雀さんがいてくれてよかったって思ってる。



多少怖いけど、この腕の温もりで分かる。


彼の優しさとか、強さとか。







綱吉はひとしきり思いにふけったあと、息を吐くと雲雀の背中に手をまわした。







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あきゅろす。
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