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Oasis





Oasis 〜一章「逃亡」〜







―俺たちの人生は2年前大きく変わってしまった。

今でも忘れられない。

人々の悲鳴を、荒れ果てた国を、血塗られた宮殿を、あの白い男の血にまみれた姿を…


「―綱吉」
蜂蜜色の髪の少年が俺を呼んだ。
彼の顔、背恰好は俺とそっくりだった。
たったひとつ。
目の色を除けば。

「ツナ。何?」
俺はいつものようにツナという少年に笑顔をむけた。

すると険しい顔をした彼が(これはいつものことなのだが)、こういった。

「アイツが綱吉のこと呼んでる。」

「アイツが?
いつものとこに行けばいいの?」

「綱吉、お前が行きたくないなら、オレが行くから。」
とツナがいつものような力強い声でいった。
「だーいじょうぶだよ。まだ俺のこと殺したりはしないって」
と俺は笑顔を作って答えた。

―ほんとは行きたくないよ。
心の声がおおきくなる。
ツナにも聞こえるくらい俺の心は叫んでいたのだろうか。
ツナは表情をかえた。

「じゃ、行ってくるねっ」
俺はツナの言葉を待たずにかけだした。


これ以上ツナに頼ってはいけないといつも思ってた。
ツナは俺の双子の兄だ。
ツナは俺より何でもできて、すごく頼りになって。
俺は彼に頼りすぎている。
このままじゃ、彼に依存しなきゃ生きていけなくなる。

それだけはどうしてもいやだった。

コンコンとノックをする。

何も返事はない。
でもこれはいつものことで、俺はそのままドアをあけた。

「やぁ。会いたかったよ、綱吉クン」
白に身を包んだ男がドアを開けた俺に向かっていった。

彼は、いつものような笑顔を浮かべてマシュマロを食べていた。

「お呼びでしょうか、国王陛下」

「やだなー綱吉クン。いつも言ってるじゃない。白蘭って呼んでって」
と彼は妙に逆らい難い笑顔で言った。
「−白蘭さん。何の御用ですか?」

「会いたかったからに決まってるじゃない。今日は君のナイトはいないようだし♪」
というと、白蘭は立ちあがって、俺の腰に手をまわした。

「綱吉クン。いい加減観念しなよ。君は僕のものなんだよ?」
と耳にささやきかけた。

「それはこの国を完全に手に入れるために俺が必要なだけでしょう?」
というと、白蘭は俺の唇に自分の唇を近付けるのをとめた。

「あなたはこの国のもともとの王位後継者の俺の血が必要なだけでしょう」

俺は白蘭の眼を見据えたあと
「用がそれだけなら俺は失礼します。」
といって彼の手を振りほどいて部屋をさった。


白蘭は振りほどかれた手に空虚感を覚えたまま、フフと笑い声を漏らした。
―あの子の眼に逆らえないなァ。
ただの可愛らしい眼なのに凛とした一本の光を宿している。
油断していると、吸い込まれそうになる。
やはり、本物はいい。
彼をグチャグチャにできる日が楽しみだね。










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あきゅろす。
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