[携帯モード] [URL送信]

崩壊エゴイズム

「なんで今日は呼ばれたんだろう」
誰かがそう言った瞬間、銀髪の男はあたりまえかのようにこう答えた。
「それは十代目が俺を必要としているからだ!むしろなんでお前らがここに来てるのか俺には不明だッ!」
「僕も、なんで綱吉の部屋に君たちが来ているのか分からないよ。咬み殺されたいの」
と黒髪の男が呟いた。
「極限わからんぞー!」
そうやって部屋の中でスパークリングをはじめる男もいた。
「うるせぇ!芝生頭!ちったぁおとなしくできねぇのか!」
「なんだと!タコヘッド!この数秒の間のトレーニングが勝利へと導くのだ!」
「獄寺氏!笹川氏!いい加減になさってください」
そう言って、二人の男の喧嘩を収めようと頑張る少年もいたが、彼はあっけなく「あほ牛は黙ってろ」の一言で一蹴されてしまっていた。
「みんな騒がしいのなー」
窓辺に座っている黒髪の短髪の男は、同じく黒髪の男にそう話しかけたが、その男に「話しかけたら咬み殺す」と言われ、大人しく黙っていた。

六道骸はこの騒がしい人間を一通り一瞥した後、この部屋の一番端の壁の方まで歩いて行った。
「相変わらず思いますが、この部屋…。鏡が貼ってあって気味が悪いですね」
骸はそう呟くと、銀髪の少年は答えた。
「あぁ…リボーンさん曰く、鏡を張っておくことで死角をなくすってことみてぇだが…」
「確かに気持ち悪いのなー」
そういって黒髪の短髪の男は窓辺から立ち上がり鏡のほうへ立ち寄った。
「死角がないことは、暗殺からの危機は逃れられそうですけどね」
牛がらのシャツを着た少年はそう言って自分のくるくるっとした前髪を弄っていた。
「ねぇ、それで、今日はどうしてみんな呼ばれたの」
黒髪のトンファーを持った男はそう言って周りにいる、人物を見渡した。
「いや、十代目の携帯から一斉送信で『今すぐ俺の部屋に来て』ってメールが届いてたから来たんだが…」
「ツナがいねーみたいだからな」
「とりあえず、一度リボーンさんのとこに行ってみるのが一番いいんじゃねぇか」
そういって銀髪の男は煙草に火を付けた。
そして、その場にいたみんなは銀髪の男の提案に乗り、そのままこの部屋、綱吉の部屋から離れようとした。
…ただ、一名だけを除いて。

六道骸は相変わらず、鏡の前に立っていた。
(なにか、いやな感じがする)
骸はそう思って、その場から離れられずにいた。
骸には超直感というボンゴレボスに備わる力などない。だから、この場で行われている本当のことなどわからない。
骸には幻術をつかったり、見破る能力はあっても、幻術以外でカモフラージュされているものにまで、見透かす力などない。
例えば、この部屋にある鏡がマジックミラーであったりすることなど、骸にはわからなかった。
精巧に作られた彼の部屋の鏡はマジックミラーであった。
だから、綱吉の部屋から、向こうの部屋をのぞくことなどできない。だから、骸はいま向こうの部屋で何が起きているのかは想像すらできなかった。
だが、綱吉とジョットにはいま、この瞬間骸の姿を確認することができる。
もっとも綱吉はこのころには意識を失い、ただひたすらジョットによって体を貫かれているだけであったが。

そして骸はそんな事実を知らないでいたが、ただなんとなく感じる嫌な予感を胸にそのマジックミラーに掌を重ねた。
(とても、嫌な予感がする…綱吉になにかあったんじゃ…)


「おーい、六道!下に降りるぞ!」


急に呼ばれたその声に六道は少しだけ体をびくつかせ、それからくるっと後ろを振り返った。
「いま、行きます」
そう答えた後、六道は掌をそっとマジックミラーから離した。するとそのマジックミラーにはうっすらと六道の手の跡が残っていて、六道はそれをぼんやりと見つめた。

(嫌な予感など、気のせいだ)
彼はそう思い込み、その場からそっと離れた。


そんな六道骸の様子を、ジョットはマジックミラーの向こう側からみて、にやりと嗤った。




(もう、手遅れだよ、骸





綱吉は私のものだ)






エゴイズム

[*前へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!