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崩壊エゴイズム
崩壊エゴイズム

俺たちの現実が壊れたのはたった一言の言葉からであった。






崩壊エゴイズム








「俺、骸と付き合うことにしたから」




そう言った時、彼は何を言ってるんだ、というような顔をして、それからふっと笑った。
「たちの悪い冗談だな」
そういうと彼は、いつものように顔に笑みを称えて、それから俺との目線を合わせるために腰を少しかがめた。
「だが、冗談にしては、少々やりすぎだと思うのだが」
彼は、その金色の瞳で俺の顔を見据えたが、口元は笑っているのに瞳には静かな怒りが含まれているのを見て俺は背筋がぞっと寒くなった。
「冗談、じゃないよ」
俺は、その恐ろしさに飲み込まれないように、唾をぐっと飲み込んでからきっぱりとそういった。だが目の前の彼は未だ分かっていないふりを続けた。
「綱吉はそうやって私の気を惹きたいのだな。そんなことせずとも私にはお前しか見えていないというに」
全く見当違いなことを言い始める彼に俺は段々焦れてきて、もういちどきちんと言うことにした。
「だから、俺骸と付き合うことにし、」
俺ははっきりと事実を告げようとしたが、それは耳元で響く大きな音によってかき消されてしまった。その大きな音というのは、まるで地響きのようにも聞こえたが、そのような類ではなく、ただ目の前の彼が壁に向かって拳を振るっただけだった。
だが、それだけでも十分な威力を発揮したのか、天井からもミシミシときしむ音がし、パラパラと上の方から木屑が落ちてきた。
もしかしたら、一本くらい柱が使い物にならなくなってるかもしれない。俺は自分の真横に突き立てられた彼の腕と、拳によってめり込んでしまった壁を見ながらそう思った。
「綱吉、いい加減にしないと、俺だって怒るぞ」
彼がそう言ったときの瞳は冷たく、暗い瞳であった。
そのあまりの恐ろしさに俺は何も言えず、ただ身を震わせるだけであった。
だが、引き下がれない。
俺は、骸と付き合うのだ。だから、この目の前の人物、ジョットと関係を持つのはもう終わりにしたい。
それを伝えなくてはならないし、もちろんジョットにも分かってもらわないといけない。
今までのジョットと俺の関係は肉体関係に陥るほどに深いモノとなっていたが、それはあくまでも親族としての家族愛の延長線だったのだ。
俺はそれを気づかせてくれた骸に今は感謝しているし、今では彼のことを一人の人間として愛している。もちろん親愛的な感情ではなく、恋愛感情として、彼が好きなのだ。
そのことに気づいてしまった以上、俺は、もうジョットとそういった関係は持てない。
だから、こうして「骸と付き合うことになった」と告げようとしているのだ。

「、怒られたって、構わない」
俺は少し震える声をなんとか頑張ってジョットに響かせた。
本当は、ジョットが怒るのはとても怖い。彼は今まで俺に対して怒ったことはないが、彼はボンゴレファミリーを築き上げた創始者である。怒ればそれはこわいであろう。
それに、怒ると怖いというのは今すでに身をもって実感している。
ピリピリと彼から発せられる緊張した空気が俺の身体を針のように突き刺すからだ。

「俺は、骸のことが好きなんだ。だから付き合うことにした」
そういって俺はしっかりとジョットの顔を見た。
彼の長い前髪で彼の表情のすべてを読み取ることはできなかったが、彼だって人なのだ。
こうして真摯に伝えればきっとわかってくれる、そう信じて俺は話し始めた。
「ジョットのことももちろん好きだよ。でもそれは恋愛としてでなくて、…きっと家族として好きなんだと思う…だから、」
俺はジョットに対して自分の気持ちを話していた途中に急な頬の痛みによってそれを途絶えさせてしまった。
一瞬何が起こったのか分からず、目を見開いたまま目の前のジョットと彼の手を交互に見つめた。
そして、数秒後、俺はジョットに平手で打たれたのだと理解した。
「この、インランが」
そしてジョットはそう一言俺のことを侮蔑した。
「骸の何がよいのだ。骸と私で何が違うというのだ。所詮お前にはそんな違いがわかってなどいない。ひと時の気の迷いでそのようなことを言ってるだけだ」
「違う!俺は骸のことが、」
「黙れ!」
俺は反論しようとして口を開いたが、それは彼の黙れの一言で一蹴される。
そして口をぐっと一文字にしたまま俺はジョットの顔を睨んだ。
「お前は私のモノだ。だれにも渡さん。骸にも、誰にも」

そういうと、ジョットは俺の腹部に彼の拳を一発差しこんだ。
俺はお腹のあたりがとても熱くなって、何か込み上げてくるものを感じたがその時点で自分の視界がブラックアウトしてしまった。






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あきゅろす。
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