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らぶ・ろまんす
H
綱吉は昨日いつも通り、校門から帰ろうと思っていた。だが、校門前に立っている男の存在に気づいて、彼は急いでUターンをした。本当は、告げないといけないことがあると分かっていたけれど、直ぐに告げることは避けたかった。
だけど、会えば、告げなくてはいけないという罪悪感に駆られる気がした。だって、六道は自分を『女』だと思っているからこそ、こうして一緒にいたいと思ってくれているのだから。
『男』と分かった自分と、それでも一緒にいたいと思ってくれるかどうか確かめる勇気はなかった。だから、昨日彼に会うことを避けて、裏門から遠回りをして帰ることにしたのだ。
綱吉自身、「友達」でいることに『男』、『女』は関係はないと思っていた。六道も、もし自分が男であったとしても、変わらず仲良くしてくれるはずである。だから、六道が自分を男だと思っていても構わないと最初はそう思っていた。
だから、本当は女ではないということを告げるのが遅れてしまったのだ。

でも、雲雀に言われて気付いた。
六道の見せてくれたかわいい一面もかっこいい一面も、それは自分が『女』であると六道が思ったからこそ、綱吉が見れただけなのだ。
もし、綱吉が男だと六道がはじめから知っていれば、きっとあんな一面を見ることはなかったのだ。
綱吉はそれに気付いたとたん、胸がツキンと痛んだ気がした。
そして、自分が男であること伝えなくてはならないと思えば思うほど、その痛みはひどくなっていき、その痛みに耐えられないがために、結局、綱吉は逃げてしまったのだ。


(どうして…、こんなに胸が痛くなるんだろう。)



綱吉はその想いの意味と胸の痛みの理由もわからぬまま、ただいつも通りに応接室の方に足を運んだ。








「おはようございますー」
綱吉がカチャといつものように、応接室のドアを開けると、ソファーに雲雀が座っていた。

「あれ、今日は仕事ないんですか?」
綱吉は当然のように、ソファーに座った雲雀の隣にポスンと座る。すると雲雀は少し体をびくつかせた。その様子に少しだけ綱吉は不思議に思ったが、あまり気にすることもなく、ソファーの背にもたれかかった。
「今日は、調子がのらないから、仕事はやってないんだ」
雲雀は、そう言うと、もう冷めたように見える紅茶の残りを啜った。
そしてカチャリとカップを置いた。
「へぇ〜雲雀さんが調子がのらないときとかあるんですねぇ」
綱吉は天井を見上げながらぼんやりとそう言った。この応接室は、本当は一生徒が使っていいような部屋ではない。だけど、ここにいる雲雀は少し特別で、風紀委員長としての地位を使って、応接室を好き勝手に使っている。
ここに置かれているものはほぼ雲雀の私物で、あのカップもソーサーも雲雀が自費で購入したものである。しかもメーカーはウェッジウッドと高級品である。雲雀は何気に金持ちだったりするのだ。
綱吉はそんな応接室をぼーっと見回した後、雲雀の顔を見て、いつもと違う感じを受けた。

「雲雀さん…?どうかしましたか」
雲雀は何か考え込んでいる節があって、何か集中できないような、イライラしているようなそんな感じがしたのだ。
「…綱吉」
「何ですか?」
綱吉は雲雀の顔を覗き込むように尋ねた。雲雀はその綱吉の微笑みを見たときに、理性やら何やら、感情の全てがあふれてこぼれおちてしまった。
「綱吉は、六道が好きなの」
雲雀の漆黒の瞳が綱吉の瞳を捕らえた。
「な…、何を急に…」
綱吉は急に真剣な顔でそんなことを聞いてくる雲雀から目をそらして話をはぐらかそうとした。だが、雲雀はそのようなことを許しはしない。
「綱吉、こっち向いて」
雲雀は綱吉の両頬を掴み無理やり、自分のほうに綱吉の顔を向けさせた。
「ひばりさ…」
「僕は、綱吉のことが好きだよ」
雲雀はしっかりと綱吉の顔を見てそう言った。綱吉は初めてみる雲雀の真剣な顔と表情に戸惑いを隠せないまま、瞳を揺らした。
「え…?」
「僕じゃだめなの」
雲雀はそういうと、戸惑ったままの綱吉の体をそっと抱きしめた。
「そんなに六道のことが好き?」
綱吉は雲雀のシャツをぎゅっと握りしめた。
「わ、からない」
「そんなのッ、わからないですよ!」
綱吉は雲雀の腕から逃れようとして、体を思いっきり突っぱねてみたが、雲雀はだんだん力を入れて強く綱吉を抱き締め始めた。もともと体格差のある二人。
雲雀が本気を出して力を入れたら、綱吉に勝ち目などなかった。
「やめて、雲雀さん!」
「ねぇ、答えて、綱吉」
雲雀は綱吉の両手首を自分の右手一本で掴みあげ、それを綱吉の頭の上の方で固定させる。
そして、そのまま綱吉をソファーの上に押し倒した。
「や…、いやだ、雲雀さん!」
雲雀は嫌がる綱吉の制止も聞かずそのまま、綱吉の唇に口づけた。
ふにっとした柔らかい感触のあと、生温かい舌で唇を割って入られるその感触に綱吉は、寒気を感じ、思わず雲雀の頬を平手打ちした。
その平手打ちの乾いた音が応接室に響いて、二人の間に気まずい空気が流れた。

「…ぁ」
「雲雀さんは…」
そして雲雀が何か一言言葉を紡ごうとしたそのとき、綱吉が口を開いた。
「雲雀さんは!いつも無理なコト注文してくるひとだけど、無理やりこんなことする人だとは思ってなかった!」
綱吉は瞳に涙を浮かべて、雲雀をにらんだ後、何も言わず、応接室を走って去っていた。




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