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らぶ・ろまんす
G
六道はうきうきとステップを踏むように昨日来た道を歩いていた。もちろん、綱吉に会うために。彼の頭の中にはおよそ、綱吉との昨日のデートや、綱吉と話した会話の数々や、その時見せてくれた綱吉の笑顔などしかなかった。今日は、何を話せるか、とかまた笑顔を見せてくれるかなどを考えながら歩いていると、自然に六道の顔はニヤついてしまっていたようだ。
普段、黒曜中の制服を着た人間はいかつい不良ばかりだと思っているおばさんたちは六道の気持ち悪いくらいの笑顔を見て、ぎょっとある意味怖いものをみたように、後ずさった。
だが、基本的に六道は自分のことと綱吉しか考えていないので、他の人が自分のことをどう認識していようが、どう見られていようがお構いなしなので、後ずさるおばさんや、ワンワン吠える犬などに意識を向けることなくただただ道を進んでいった。
ようやく、昨日と同じ時間に同じ場所についた六道は校門にそっと凭れ、目を閉じた。

秋風の少し肌寒い風を心地よく感じながら、ぼんやり綱吉のことを待っていると、ざわざわと沢山の生徒たちが校門を通りすぎる声や足音が聞こえた。


(もうすぐ、だ。もうすぐ、ツナさんに会える。)


逸る気持ちを抑えきれず、今度は目を開け、校舎から出てくる生徒たちの中から綱吉を探した。
しかし、いくら探しても六道の求める人物は現れない。
時計の短針はもう、いつの間に一周していたが、それでも綱吉は現れなかった。


(補習だろうか?それとも、今日は風邪でも引いて休んでしまったのだろうか)


六道はもうすっかり寒くなってしまった風から自身を温めるように自分の肩を抱きこんだ。
このままたぶん待っていても出てこないかもしれない。そう思った六道はとりあえずこの場から動こうと思った。彼が向かったのは、もうすっかり人気のなくなった、殺風景な校舎の方だった。







タンタンタンと響く自身の足音から察するに、もうこの校舎にはほとんど人は残っていないのだな、と六道は実感した。
だとしたら、もうすでに綱吉はいないのだ。やはり風邪などひいてしまったのだろうか。
そういったことを考えながら六道が向かった先はもう校舎の中で唯一電気の点いているところであった。


「なんだ、君か。何の用なの」


明らかに機嫌の悪そうな雲雀をみて六道もはぁっとため息をついた。それはまるでやれやれといったような感じのため息のつき方であったので、雲雀の機嫌はさらに悪化したようである。

カンっと大きい音をさせて持っていたボールペンを机に置き、六道に対してこちらへの注意を喚起したのだ。
「何にも用がないなら帰ってよね。僕は君と違って忙しいんだから」
そういって雲雀は先ほど置いたボールペンをふたたび手にとって、サラサラとペンを走らせた。

「僕だって、暇なわけではありませんよ。ただ、ね」
六道は応接室のドアを開けたままそこに背を持たれかけた。開けっぴろげになった扉から入ってくる少し肌寒い風に雲雀は身震いをした。
「…綱吉に会えなかったんじゃない」

雲雀はぼそりとそう呟いた。さっきから走らせていたペンは、もはや、何の意味もない文字しか紡いでおらず、ただ動かしているだけであった。


「…、なんでわかるんですか、」
六道は腕組みをしたまま、怪訝そうに雲雀に尋ねた。
「別に、ただ…」
「ただ…?」
雲雀は食いついていくる六道を一瞥すると、ふぅと息をついた。
そしてもう一度、六道の方を見て、はっきりと口に出してこう言った。


「あの子に関わるの、やめてくれない」

六道は一瞬、雲雀が何を言っているのか分からなかった。というより、雲雀がこのような発言をするとは思っていなかった。
六道自身、人に執着するということをあまりする人間ではなかったが、この雲雀という人物も人に執着することを好まない人であることを六道は熟知していた。
そう、自分とよく似ている奴であると思っていた。
そして、この雲雀のした発言を聞いて、その言葉の意味を理解したらすぐ、雲雀の綱吉への想いをも理解した。
つまり、そういうことなのだ。
この目の前にいる男は綱吉に対して、独占欲をむき出しにしている。
だから、さっきのような発言をしたのだ。
だが六道も、雲雀が綱吉を好きだからといって、自分の想いを諦めてやるような性質ではない。また、六道と雲雀はそのような間柄ではないのだ。

「なぜです。そんなこと君に言われる筋合いないでしょう」
六道はまだ腕組みをしながら、そして余裕を持ったまま、雲雀にそう答えた。
そんな余裕綽々に答える六道に対して雲雀は、眉をひそめ目を閉じてから、言葉を発した。


「あの子が言っていたんだ。もう関わりたくないって」
「は…?」
「だから、もうここには来るな」
雲雀はその言葉を発してから、また、自分の目の前におかれた書類のほうに目を通し始めた。今度は、ペンを取ってからきちんと意味のある文字を書き始めたが、それもやはり集中して書くことはできなかった。



そして六道の方はというと、雲雀の言ったその言葉を聞いた瞬間目の前が真っ暗になる錯覚を覚えた。
―『関わりたくない』か。
だから、今日は迎えに行っても会いに来てはくれなかったのか。


凄まじい虚無感と相反するように、頭の中だけは妙に整理がついていた。
いくら頭が理解していたとしても、心まではついていかないのだろう。六道は腕組みをほどいて茫然と腕をしたに下げたまま、しばらくその状態のまま動けなかった。




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