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らぶ・ろまんす
A
「ひばりさぁあああんッ!もうっ、ほんっといい加減にしてくださいよぉッ!この一週間、この格好のせいでどれだけ、俺が迷惑してると思ってるんですかっ!???」
大きな音を立てて開いたドアからのぞいたのは琥珀色の髪色のショートカットの『少女』で、紺色のセーラー服を身にまとっていた。

そう、六道が見たあの『少女』だったのだ。

彼は茫然としつつ、彼女が叫ぶ声を聞きながら立ちつくしていた。すこし高いけど、丸み帯びたその声は聞くに心地よく、およそ何をいっているのかは六道にはわからなかったが、すぅっと体に溶け行く感じをただ味わっていた。

「別にいいじゃない。君、別にそういった格好しなくてもよく絡まれてるんだから」
雲雀は口元を少しだけ緩めながらそう皮肉じみたことをいう。
すると『少女』は憤慨した様子で叫んだ。
「普段俺が絡まれてるのは、ただパシられたり、かつあげされそうになってるだけですっ!いま絡まれてるのとは趣旨が違うんですよ、趣旨が!」

少女はそこまで一気に言ったのち、自分を見つめる視線に気づいた。そして、はっと我に返り、ぺこりと挨拶をした。
「すいません。大きな声だしてしまって……。えと……雲雀さんのお知り合いの方でしょうか?」
『少女』がそういうと、六道はフリーズしていた体をゆっくりと解凍状態に導き、そしてようやく『彼女』が言ったことばを理解し始めた。

「あ、えっと、その、僕と雲雀君は友達、のようなものです」
「嘘つかないでくれる?いつ僕と君が友達になったのさ」
思いっきり猫を被った応対をした六道に対し、雲雀はすかさずつっこみを入れる。
だが六道はそのつっこみさえ気にも留めず、一直線に『彼女』を見つめてこういった。

「お名前、聞いてもいいですか?」
ほほを赤らめそう尋ねる六道を雲雀は気持ち悪いと思ったが、今度は何もいわずそっと溜息だけついた。

「あ、俺沢田綱吉っていいます。風紀委員にはいってます。えと、そちらは……?」
控えめにそういった綱吉の愛らしさに六道は悶絶しそうになるが、そこはぐっと堪えて自己紹介を始めた。
「僕は、六道骸と言います。隣町の高校に通ってるんですが……雲雀君とはなんだかんだで4年間くらいの仲ですね。あの……僕はなんとお呼びしたらいいでしょうか?」
流暢な敬語を使い、いかにも知的です!といった感じに聞こえなくはないが、六道は内心でものすごく焦っていた。
心臓はバクバクするし、手に汗はかくし、いろいろと大変な状態になっていたが、長年面の皮が厚い状態で生きてきたので、表面上のみ繕うことは彼にとってはできなくはないことであった。

「そうですねー……。大体みんなに『つな』って呼ばれてるので『つな』とかでおねがいします」

(つなですか……なんて愛らしい名前なんでしょう!)
そういったこと考えて六道は少しぽーっとしていると、綱吉はそんな彼を不思議に思って「……どうしたんでしょうか?」と雲雀に尋ねた。
すると雲雀から返ってきた答えは「ほっときな」というものであった。
そしてようやく現実世界に戻ってきた六道はガシッと綱吉の手をつかんで、
「つなさん……、明日あいてますか!?」
とたずねた。

「あ、あしたですか……?えと……明日放課後なら空いてますけど?」
綱吉はびっくりした様子で目をぱちぱちさせながらそういう。
「では明日の放課後、お茶しませんか?この近くにおいしいケーキ屋さんがあるので」
六道がそういったとき雲雀はピクリと反応した。
何を急にこいつは……と彼は思ったが、だが口をはさむことはしなかった。
それは「どうせ、綱吉は断るだろう」という確信をもっていたからだろうか、それとも、まだ『勘違い』をしてはしゃぐ六道を上から見下ろしていたかったのだろうか。
その真意は雲雀にすらわかりかねるものであったが、確かに雲雀はこの二人の会話に口をはさまなかった。
このことが余計でややこしい問題を生み出すとはここにいる誰もの想定外であっただろう。


「お茶、ですか……いいですよ?別に。何時に待ち合わせしますか」
綱吉が笑ってそういった瞬間雲雀はガタンっと大きな音を立てて立ち上がった。
だがその音は六道の「ほんとですか!?」と喜ぶ声にかき消されて二人の耳には届かなかった。









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あきゅろす。
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