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らぶ・ろまんす
L
しばらく沈黙が続いた。
女ではないことが分かると六道はどういう反応をするであろうか。
気持ち悪がるだろうか。
「女装をするなんて吐き気がする」などと思ってはいないだろうか。
ましてや、もう友達としても見てもらえないのではないだろうか。
綱吉の頭の中にはそのようなことが駆け廻った。
もう、六道の顔は見れなかった。だから下を向いて目をぎゅっと瞑っていた。


(言うなら早く言って…!「お前なんか嫌い」だと!)



「馬鹿じゃないですか」
六道は低い声でそう言ったあと、綱吉の身体をもう一度きつく抱きしめた。
「貴方、本当に馬鹿ですよ」
「な、な、なんだよ!」
綱吉はもがくように身体をよじらせたが、あまりにも違いすぎる体格差と、力の違いのため、ソレは何の効果もなかった。
「本当…、馬鹿ですよ…」
六道はそう言うと綱吉の身体をさらにキツク抱き締めた。
「僕はそんなこと、とっくに知ってましたよ」
「…は?」
「貴方が男であることは、知ってました」
「ハァ!?な、なんで…!」
「最初にケーキ屋さん行った帰りに、僕、貴方を抱きとめたでしょう?その時に…、あの…」
「要するに…女ならある胸がなかったと…?」
「まぁ、簡単に言ってしまうと、そう、ですね」
六道がそう言った瞬間、綱吉は彼の身体をドンと突き飛ばした。
「ッ変態!なんで、触っただけでわかんだよ!?」
「んな!だって仕方ないでしょう!?分かるものはわかってしまうんですから!」
六道は、全く悪びれる様子もなくそのように応えた。
綱吉はそんな六道をちょっと軽蔑した目で見て、それからはぁーと大きなため息をついた。

「なんだよ…わかってたならそう言えよ…」

「だって、言う暇なかったじゃないですか。それに言ったとして、何なんですか。別に僕は貴方の性別がなんであろうと関係ないのに」
六道はそう言うと、綱吉の顎をくいっと持ち上げた。

「僕は、貴方が女性であろうと男性であろうと変わらず、貴方は貴方だと思っています」
「六道さん…」
「ねぇ…今度はもう言っても構いませんか」
六道は綱吉の耳元に唇を寄せて、そうつぶやいた。

綱吉は顔を真赤にして、六道の服の裾をつかんだ。
そして、六道にだけわかるように小さく、うなづいた。
六道はそんな綱吉を見て優しく頬笑み、それからはっきりとこう言った。

「僕は貴方のことが好きです」

―だから付き合ってくれませんか?

綱吉はその了承というかのように、その瞼を閉じて、柔らかな桜色の唇を六道に向けた。
そして六道はその唇にそっと口づけを落とした。






END

*それから数十秒後*

柔らかく温かい触れるだけのキスを交わしてから、二人はそっと離れ、見つめあっていた。
とても至福なときが流れていた。
それをぶち壊したのは、あの人であった。


ジャキッ

「風紀を乱すヤツは咬み殺す」
ひんやりとした金属の感触が六道の喉に感じられた。
「ひ、雲雀さん!」
綱吉は目の前に現れた先輩を見て、吃驚した声をあげた。
そして、今までの六道とのキスを見られていたことに気づき、顔を真赤にした。

「クフフ…なんです?このトンファーは。まさかこの僕とやりあうつもりですか?」
六道はどこから出したのであろう、三又の槍をとりだし、それを雲雀に向けた。

「ちょっ…六道さん!雲雀さんも!やめてくださいよ!」
綱吉の叫びは悲しいことに二人の争いをとめる効果はあまりなかった。
ハラハラしながら綱吉が見守るなか雲雀が口を開いた。

「綱吉を泣かせたら、お前を八つ裂きにしてやる」
雲雀がそう言うと六道の動きはぴたりと止まった。
「雲雀さん…」
綱吉は雲雀の名前を呼んだ。
だが、彼は綱吉の方を振り向かなかった。かわらず六道のほうだけを見ていた。
「…、君に言われなくとも。僕は彼を泣かせたりはしません」
六道も雲雀の顔を見てはっきりとそう言った。
それをきいた雲雀はふぅと息を吐いてトンファーをしまい、軽く身支度をした。
「今日のところは見逃すけど、この並盛では不純同性交友は許さないから」
雲雀はそう言ってから、にやりと笑い、綱吉と六道に背を向けて去ろうとした。

「雲雀さん!」
綱吉は六道もびっくりするくらい、大声で雲雀の名前を呼んだ。
雲雀はその声に足を止めはしたものの、相も変わらず綱吉には背を向けたままであった。
「雲雀さん…、俺」
綱吉は雲雀に言う言葉を探してみたけど、何も見つからなかった。
どの言葉を言っても彼には失礼にあたる気がしたのだ。
「あの、…えと…」
「また」

「また、応接室においで」

雲雀は振り返らずにそう言った。
綱吉の方を向かなかったけれど、その言葉は確かに綱吉に向けられたものであった。

「美味しい紅茶とクッキー、用意して待ってるから」

「そこのパイナップルの愚痴でも言いたくなったら、いつでも来な」
そういうと雲雀はすこしだけ振り返って、口角だけを意地悪く上げた笑みを浮かべた。
「んなっ!」
六道は雲雀の発言に不本意だという声をあげたがそれ以上は何も言わなかった。
それは六道自身も雲雀の思いには気が付いていたからであった。

「またね」
雲雀はそう言うと、黒い学生服をひるがえしてまた歩き始めた。

「ありがとうございます!」
綱吉は後ろ姿の綱吉に向かって叫んだ。
そうすると雲雀は右手だけあげ、ひらひらと振っていた。
綱吉はそんな雲雀を彼の姿が見えなくなるまでただただ見つめていた。

「つなさん」
六道はそんな綱吉にいくらか焦れたのか、名前を呼んだ。
「いい加減こっち、向いてくださいよ」
六道は綱吉の頬に手を当て、それから再び彼の唇にキスをした。




もうすぐ春が来るそんな季節。
一つの恋が結ばれた。


『らぶ・ろまんす』

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あきゅろす。
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