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らぶ・ろまんす
らぶ・ろまんす


風紀委員の腕章をつけたセーラー服の少女が窓から飛び降りてきた。
ひらりと黒いスカートが翻ると細くて生白い脚がのぞいた。

『少女』は僕を一瞥するとくるりと踵を返して一目散に校門まで走り抜けた。
僕はその様子をただただ見つめていた。







らぶ・ろまんす






「、というわけなんですよっ!雲雀恭弥!」
そういって黒塗りの高級な机を力任せに叩いたのは、青みがかった黒髪の少年で、その少年をみながら、雲雀恭弥と呼ばれた切れ長の瞳の少年は溜息をついた。

「なにが、『というわけ』なのかさっぱりなんだけど。」
雲雀恭弥は苛立ちを隠しきれないように(隠すつもりもないだろうけど)指でトントンと机を叩いた。

「さっぱり、だなんてそんな!君は何か知っているでしょう!あのセーラー服の『少女』を!」

キラキラした瞳で雲雀を問い詰める少年は雲雀の知っている人物ではなかった。
(恋は、人を変えるってこういうことを言うのかな。)
今目の前にいる少年は、隣町の中学の不良でこんな輝く眼をしてはいなかった。もっと、どす黒く陰欝とした暗い雰囲気を醸し出していたような気がする。
そして、少し前の自分に似ていた。誰も信じる事なくただ己の力と運だけを信じて生きてきた。




雲雀はそこまで思ってフッと苦笑した。


(自分を『変える』原因まで一緒だった、なんてひどく笑えない)



「なんですか?奇妙な笑みを浮かべて。気持ち悪い」
「君に言われたくないね。この腐れパイナポー」
「なっ!僕には『六道骸』という名前があるんですよ!」
そう、青みがかった黒髪の少年はムキになっていった。


(僕らは似た者同士、だけど僕は君のことを好きにならないだろうな、)

「君は人の名前も覚えられないんですか?…ぁあ、君はアヒルですから記憶力に乏しいんでしたっけ?クッハハハハ!なんとも愉快ですねぇ。」

(…っていうか、むしろ嫌いだ)

「、随分言ってくれるじゃない。」

雲雀はギロリと瞳だけ向けて睨みつける。すると、クハと嘲笑うような笑みを浮かべ六道はこう言う。

「とにかく、君が「アノ子」を知っているはずなのは分かっていますから。」
―さっさと教えてくれませんか。

雲雀は存外に必死そうな六道を見てフッと口元を少し緩めて笑う。

(僕も人のことを言えたクチではないけど)

あの子のことを思えば、気が逸る。
思いだけが迫り出され、自分の理性やら何やらが砕け散ってしまいそうになるのだ。
教えてやる気などさらさらない。
雲雀はそう思った。
自分だって必死なのだから、他人に口出ししてやる必要などない。

……それでも、この憎たらしい人間に対して何か一つカマをかけてみたかったのだ。
コイツの焦って戸惑う様を見て自分だけが「理性」を失うわけでないことを証明してみたかったのかもしれない。


「…知ってるさ。君が言ってる「女」は風紀委員に入ってる。あと5分もしたらここにやってくるさ……ほら、来た。」

雲雀はそう言うとバタバタと廊下を走る足音のほうに耳を傾けた。
その小さな仕草を見た六道はドアのほうをくるりと振り返ってみる。

するとバタァァァンッと激しい音を立てて扉が開いた。












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