風と雨
誓った決意
「ボス、どうしたんですか!?何故、急に髪の色を元に戻したんですか!?」
『戻さないといけないまで事態が深刻になってきたからだ。』
「お話中失礼します。ボス、ヴァリアーが密かに活発に活動しているようです。確か奴らは活動を禁じられていたはず……。」
『ザンザスが帰ってきたからだろう。1時間以内に部下を集めろ。来れない者には回線をまわすように。』
「はい。」
1時間後――――
『これは大事な話だ。これから先、我がアマリリスファミリーは厳しい立場にたたされることとなるだろう。それはひとえに俺……私、科戸 紗紅夜に流れる血のせいである。』
「…………。」
『今暫く私のせいで死と隣り合わせの生活や仕事になるだろう。下手をすれば、この先ずっと死がついてまわることになる。それが嫌だと思う者は私の元に来て欲しい。連絡でも構わない。私が責任持ってここから逃がしてやる。』
いきなりのことで何が何だかわからない部下たち。ただわかるのは自分たちの身を案じての言葉だということだった。
『私は妻子ある者、大切な人のいる者を死地に赴かせたくない。私の大切な者の大切な幸せな笑顔を奪いたくない。私のエゴかもしれない、死ぬかもしれない場所に赴かせたくないんだ。頼む……、私一個人のせいで悲しませたくないんだ……。』
「ボス!!」
「俺たちはボスを残して、自分たちだけのうのうと生きていこうなんて思いませんぜ。」
「ボスのいる、このファミリーだからこそ俺たちは頑張れるんだぜ。」
「みんな、ボスに付いていくよなっ!」
一人の部下の掛け声に他の部下たちが「おー!!」と大きな声で答える。
「聞いたか、ボス。俺らは貴女に惚れて付いてきてるんだ。だから、そんなことを言わないでくれ。」
『みんな………。』
「何か理由があってのことだろ?ボスが考えなしに言う訳ねーじゃねーか。」
「だから、一人で抱えこまないでくれ。ボス、貴女あっての俺らなんだ。俺らに話せる程度の事くらい言ってくれよ。そんなに頼りないか?」
『ありがとう……。私なんかについて来てくれて。でも、何も知らないで皆を危機にさらし、私について来てくれるのは忍びない。私は全てを包み隠さず話そうと思う。』
そして暫くの沈黙ののちに紗紅夜は口を開いた。
『近い内にボンゴレのボンゴレリングが動くだろう。いや、既に動いているかもしれない。何故、ボンゴレリングの話だと思うだろう。実はアマリリスは同盟以上にボンゴレと関係があるからだ。それは俺がリングの守護者の一角を担っているからだ。そう、風の守護者として……。』
紗紅夜の言葉を一字一句聞き逃さないようにと静かにしている部下たちには緊張が走ったままで、ただ己の唾を飲む音が大きく聞こえていた。
『ボンゴレ9代目は10代目として[沢田綱吉]をボスに推した。だが、リングが継承されない限りボスの座につくことはできない。その盲点をボスの座を欲するザンザスが易々と見逃す筈がない。そして動いた時、沢田綱吉はザンザスとリングを賭けた戦いを否応なく、しなくてはならなくなる。その時、私は両者から守護者としてどちらにつくかの選択を迫られるだろう。しかし、風の守護者はどちらかの味方になることは許されない。守護者と言う身分ながら、リングだけを守るのが掟だからだ。だから、リングの争奪戦に直接的に参加することはない。だけど「ボス!!」』
「好きでここにいるんです。ずっとボスとファミリーのみんなと居させて下さい。」
その言葉に小さく頷き、話を続ける。
『ザンザスがボスになった場合は言わなくてもわかるだろう。仮にボスに向いていないと言われる沢田綱吉がボスになった場合、無駄な抗争も殺し合いも少なくなるだろう。しかし、いざという時に力がなくては守るものも守れない。そのたびにいちいち私がでしゃばってはボンゴレの力が誇示できない。そこでボンゴレから独立しているヴァリアーの力がどうしても必要となってくる。その上でどちらも死なれては困る。………私はどちらも死んで欲しくない。』
「…………。」
『異論のある者は臆せず言って欲しい。このファミリーは私のものではない。お前たちがいてこのファミリーは成り立っているのだから、お前たちの意志に私は従うつもりだ。』
「俺はザンザスのように恐怖で支配する世界じゃなく、血の流れることのない平和的な世界がいい。……みんなが笑って暮らせる世界が一番いいと思う。」
「私もそう感じるわ。これが私たちの意志。私たちの意志はボスの意志よ。どこまでも貴女についていくわ。」
『本当にありがとう。私はあなたたちを誇りに思うよ。』
命に代えてもあなたたちを守ると
密かに誓った決意
たとえお節介でも構わない
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!