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風と雨
七夕 06

「よっ!」

ベルに親しげに話しかけてきたのは、山本武である。彼は同僚のスクアーロとともにボンゴレ二大剣豪と称される男である。
リング戦ではスクアーロを倒したことのある男だが、いかんせん甘い。敵であるスクアーロに峰で戦うなど甘すぎる。
そんな男もボンゴレ二大剣豪と称されるのだから世も末だ。

「はぁ…。」

「何で俺の顔を見てため息つくんだよ。」

「王子だってため息つきたくなる時だってあんだよ。(主にカス鮫のせいでな。)」

もう一度、ため息をつきたくなったが出てくることはなかった。ため息をついたからと言って現状が打破できるわけではないし、何より目の前にいるお気楽な頭の持ち主に呆れてきたからだ。
まぁ、それもこれもスクアーロたちが"早く"帰ってこればいいだけの話だ。

「それにしても遅くないですか?」
静かに紅茶を飲んでいた骸が口を開く。

「1人だけならまだしも2人もいないんです。特に紗紅夜がいないのがおかしい…。暫く彼女はヴァリアーの短期任務しかないはずでしたし、自分のところの雑務が山の様に残っているはずです。そんな忙しい身の彼女が誰にも言わず、未だに帰ってこな「煩いよ。」」

今まで椅子に腰掛け、静かに目を瞑っていた雲雀。それは嵐の前の静けさだったのだろうか。

「どうして君が彼女の仕事を知っているんだい?ボンゴレのならまだしもヴァリアーまで知っているなんておかしいよ。」

今、雲雀の「おかしいよ。」にダブって「気持ち悪いよ。」と聞こえたのは、気のせいらしいです。えぇ、作者だけのようです。

ベルもおかしいと思っていた。何故、ボンゴレから一歩距離をおいている骸が知っているのか。変な…気味悪いことである。

「き、聞いたんですよ。」
目が泳いでますよ、骸。

「ふーん。」
骸の動揺に疑いの眼差しを向ける、雲雀とベル。そんな中、「そうなのな。」と、人を疑う事を知らない人間がここに。

「僕は彼女に直接聞いたことあるけど教えてはくれなかったよ。」

なんか仕事を押し付けられそうだったから言わなかった。(紗紅夜談)

「ヴァリアーの任務はボスが全部仕切ってるんだぜ。(特に紗紅夜とカス鮫のやつは念入りに練ってあるっーのに。)俺ですら自分の予定がわかんねーのによくわかるよな。」

いえいえ、ヴァリアーではちゃんと予定表を配っていますよ。(ベルはよくなくすためわからないことが多い。)幹部の予定表(コピー)は全て紗紅夜の執務室に貼ってあって、幹部どうしが任務の交代をする時(やむにやまれぬ事情の時のみ)に交代がすぐできるようにしてある。

「骸、顔色悪いぜ。どうかしたのか?」
ははっと爽やかを柄に描いたような笑顔で骸を心配する山本。ねぇ、それ素ですか。

「ど、どうもしてませんよ…。」

「それは置いといて本当に遅いよね、紗紅夜。本当に2人の居場所知らないの?」

「場所は知らねーけど、連絡ならついたぜ。ちょっと時間がかかるってよ。」
ベルは不自然にならないよう顔を隠しつつ窓枠にもたれかかり、外を見る。

早く帰ってこいよ、カス鮫。何で俺がこいつらの面倒見なきゃいけねーんだよ。ちょうど任務でいなくて済むと思ったのにボスが残れって…。任務はレビィと交代だし、オカマは長期任務で帰ってこれねーし?

そんなことをウダウダ思っていたベルだったが、一台の車を見てニヤリと笑う。その笑いは今、この部屋にいる誰にも気付かれることはなかった
。……むしろ気付くどころではなかった。骸と雲雀が一触即発状態で山本が必死になだめていたからだ。

あの車は間違いなくカス鮫の乗ってた車だ。こんなに遅いのは道に迷ったなんてことじゃねーだろうし。(むしろスクアーロが迷うなんて有り得ない。)まっ、紗紅夜の様子を見ればすぐにわかるか。


「咬み殺すよ、南国果実。」

「な、南国果実とはいただけません。輪廻を巡らせてあげますよ!!」

「まーまー、骸も雲雀も落ち着けって。こんなところでもケンカすんなよな。」

「「君は黙ってて。」ください。」








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