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非BL小説
成り済まし
 もりかは自分の悪行が掲示板に載った時、唖然とした。どうして自分がやったことがばれたのか分からず、半ばパニックに陥った。
 すぐに始まった、晒し行為。
 削除依頼を出しても迅速に動かない掲示板の管理者にいらつきつつ、両親にこんな事はしていない冤罪だと訴えた。両親はもりかに甘いからそれを信じて、警察に相談に行ったりもしたが、もともと感情の起伏の激しい人達だから、冷静に被害届を訴えられず、ぷりぷり怒って帰ってきただけだった。
 そんな中、もりかの個人情報が色々な所に拡散して貼られ出し、削除依頼に迅速に動いてくれる所もあったけれども、それ以上に動きの速い顔の見えない第三者のスネーク行為にもりか達はなす術もなかった。ここで、もりかは姉に相談する事にした。もりかの姉は、介護の為に建築された家の庭にあるプレハブに、祖父が死亡した後移り住んでいる。母屋に来るのはトイレの時だけで、住民表上は同居だがここしばらく話した事はない。しかし、この姉は家族の知らないうちに弁護士になっていた。
 母屋に通された姉は、話を聞くともりかに困ったように首を傾げた。
「ごめんねえ、私、馬鹿だから」
「馬鹿なのは知ってる!もう、役に立たないんだから!」
「ごめんねェ、もりかみたいに可愛くて賢くないから」
 もりかはその言葉につんと顎を上にあげた。
「そうよ、あんたなんか本当に役に立たない」
 姉は幼い頃から差別されて育った。育つにつれて差別はひどくなり、高校生になる頃には母屋への出入りを制限された。トイレ以外入らず、買ってきた出来合いの物で栄養を取り、風呂は銭湯を使う。姉は、実の家族に差別されて育った。この家族は歪んでいて、家族の中に、いじめの対象を造り出さないではいられなかったのだ。
 姉は早々に己の立場を自覚した。
 幸福か不幸か、姉にはそういった立場でも金を得る算段があった。中学時代の恩師が、姉に金を貸してくれたのだ。その人も似た様な育ちで、教師をしているのは趣味も兼ねている資産家だった。秘密裏に援助をし、それがばれると、ネグレクトだとばらすと両親を脅し現状を維持し続けた。
 それが、姉の望みだった。
 年の離れた妹、差別だけくれた両親。
 もりかを見て、姉は笑う。
 まだイソ弁の立場だが、独立はできた。しなかったのは、復讐の為だった。
「本当に馬鹿」
「ごめんねえ」

 姉は、5日前あるネットカフェにいた。
 最近は会員登録が必要な店舗が多い。多いけれど、探せば会員登録がいらない、監視カメラのない店はある。
 同居していたのは、その方が復讐の種を見つけやすいと思っていたから。
 あの日のケセラは・・・・もりかの姉の成り済ましだった。

 馬鹿な子・・・馬鹿な子・・・。
 まあ、良い。
 里佳子に嫉妬したもりかは、姉の手で地獄への扉を開けた事に気が付かない。
 

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