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中編
その5
 姫君は思う。
 己が騎士の事を・・・。
 側仕えの侍女に、脅し半分で聞きだした事実。
 後悔するが良い・・・。
 国滅びし時、己が運命を受け入れ絶望の淵に居た姫君は、決心する。
 全てを失った自分が、ただ一つ愛した騎士。男女のそれではないけれども、尊敬し共に朽ちる事に幸福を見出すほどに愛した騎士セイン。
 それを汚した罪は重い。

 亡国の姫君は、賢く強い。
 今はまだ幼くとも、王族として相応しい人間。
 姫君は文を書いた。
 騎士セインに・・・。
『例え何があろうとも、貴方は私の誇る騎士。命を絶つことは許しません。良いですね、何があろうとも、私は貴方を誇りに思う。共につらかろうと、生き抜いてみせましょう』
 王達に閲覧され、面白半分に騎士セインに渡されたそれ。
 が、セインにとってはそれでも救い。
 目の前で命を絶ちかけた姫君が、生きると約束してくれた。
 なれば、汚濁に塗れようと生き抜いてみせよう。
 ただ・・・姫君の為に。
 敬愛する、貴方の為に・・・。

 これが始まり・・・。
 
 セインは毎夜王達の慰みモノにされる。全員で嬲られる事もあれば、個々で閨に呼ばれる事もあった。時には全員の前で浅ましくも後腔を弄って果てる事を強要され、時には男根を模した玩具で嬲りモノにもされた。
 狂わないでいられたのは、王が面白半分で教える姫君の様子。直接話す事は敵わぬまでも、時に中庭を歩く姿を遠目に観察出来たりもした。健勝である姫君の生活こそ、セインの救い。
 そして、姫君は身体も貧弱で肌も汚い。幼き頃の病のせいで、治る事のないざらついた肌触り。これが、何より王達の興を削いだ。まして、醜いの一歩手前の地味で華やかさの欠片もない顔立ち。これが幸福。そうでなくば、姫君も騎士セインと共に閨での慰みモノとされたであろう。姫君の存在意義は、ただ騎士セインを捕える為のモノ。故に、制約もなくある程度の自由を与えられた。

 そして、2年が過ぎた。

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