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中編
僕の可愛い人だから
「で、何のご用でしょう」
 そう言って僕、高村鈴鹿は生徒会書記東雲東(しののめあずま)様を、睨みつけた。
「おまえ、久遠。ひどい」
 久遠と言うのは、転校生の事である。その話題かいと、僕は眦を吊り上げる。
「会長親衛隊は、なあんにもしてませんよ。してるとしたら、自分の所でしょう!満足にコミュニケーションも取れないで、把握できない癖に!会長親衛隊は、綺羅の大親友の僕が隊長ですからね、制裁とかやりません!だいたい、仕事もしないで、えらそうに!」
 僕は、苛々しているんだ。なにせ、綺羅が倒れたからね!
「仕事、俺だけじゃ・・・」
「ええ、みんな、みいんなでおさぼですね!綺羅が全部やってます!凄いですよ!パソコンの打ち込み、神業になりました。ありがとうございます!書類読むのも、信じられない速度ですね!」
「・・・全部」
 ああもう、うざい喋りだよ、この人。
「僕は、これから倒れた綺羅に、ご飯作らなきゃいけないんで。あぁ、このままずーとずーと、来ないで良いですよ、生徒会室!綺羅一人で回しますから。それで、歴代一のできる会長と言われるそうです!良かったですね、歴代一位の使えない書記様!」
「あ・・・会長、倒れ・・・」
 僕はもう、そのまま走り出した。
 綺羅に、てんぷら抜きの鍋焼きうどんを作ってあげなければいけないのだ。
 うん・・・、仕事も忙しかったけれど、倒れたのは違う理由。
 やられ過ぎ・・・。
「綺羅、起きた?」
 綺羅は、一般生徒のフロアにいる。もちろん、僕と同室になるためだ。綺羅は、忙しいから僕がいろいろ面倒見てやらなければ、いけない。
「ああ・・・。くそ・・・、これぐらいで倒れるなんて。根本的に体力改善しないと・・・。そうか、これを機に、何かスポーツでも始めよう!」
「いや・・・、そもそもセックスで中から内臓ガンガン揺さぶられたら、どんなに鍛えようと無駄だと思う」
 綺羅の張り切りに、冷静に突っ込む僕。
 まあ、綺羅の事だから、スポーツ始めればすぐにそれなりの腕前になるだろうけど。やだね、天才肌は。
 綺羅は、理事長とホスト野郎のお誘いを断り続けていた。本当に良い心がけなんだけど、これが悪かった。人は逃げられると追いかけたくなるもの。しかも、綺羅は超絶美形。まあ、でかいけど。どう見ても見た目タチだけど。残念な子だけど。それでもまあ、得難い人物だしね。で、燃え盛らせてしまったわけだ。
 結果、3P。
 なんでって思うよね。一人だと逃げられるから、二人がかりで愛してるって追い詰めて、ガスガスと・・・。追いかけまわしているうちに、お互いに気が付いて牽制しまくっていたくせにどうしてそこで共闘するかな?結果、さすがの綺羅も倒れました。
「ねえ、また、3Pヤッテみたくて、途中で好きにさせたとかないよね」
「あ・・・う・・・すまん」
 綺羅は、僕には絶対に嘘をつかない。
「もう、卵抜いちゃうから!」
「うあ!勘弁してくれ!」
 半熟玉子好きの綺羅は、情けない顔になる。
「まあ、それでも反省したらしくて、かなり無理を聞いてくれそうだぞ。ホストも理事長も体育祭に、フルで協力してくれるそうだ。優勝賞品、今年度は、ホストと理事長も選択肢に入れてやろう」
 体育祭の商品の、好きな相手への命令権は、例年は生徒会の役員に対して使われることが多いけれど、確かに理事長や顧問先生も人気あるから、盛り上がりそう。
「ねえ、体育祭の準備、平気なの?」
 そうでなくとも忙しいのにと、心配になる。
「あぁ、平気だ。体育委員が皆できるやつらばかりだし、俺様が、一人生徒会だと皆知っているせいで、協力的だしな。むしろスムーズすぎて怖い」
 綺羅が一人で頑張っているというのは、ちょっと考えれば分かる事だし、僕ら親衛隊も率先して情報流したもんね。僕にできることは少ないけど、綺羅の為にできる事に、手を抜く気はないよ。
「じゃあ、しょうがない。綺羅の為に、半熟卵入りで作るね、鍋焼きうどん。あと、何してほしい?」
「おう!食べた後、膝枕してくれ」
「了解」
 綺羅は、膝枕とか大好きなんだよね。可愛いもんだ。
 僕はそんな事を考えながら、エプロンを取り出したのだった

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