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愛の嵐
終わりの始まり
「なんで・・・」
 男は自分の喉元に喰らいつく、娘を見た。まだ、可愛い盛りの5歳の幼女。遅くにできた子で、本当に可愛がっていた・・・。男の肉が裂け、命の灯が消えようとしたその時、男は自分を貪り喰らう娘の髪を、撫ぜた。

 その村に起きた事は、火急速やかに花王に伝えられた。
 全ての住民がアンデットになった村。封じ込めは迅速で、小さな村は魔法障壁で囲まれた。その地に赴いたのは、花国でも秀逸な第3師団と、白と黒の魔法使いの精鋭。
「感染する・・・と」
 ネクロマンサーの花王は、村の報告に目を細めた。
 通常、アンデットはネクロマンサーの術で使役され、術者が死んだり術が解ければただの死体に戻る。
けれど、アンデットまみれの村は、アンデットに襲われ負傷した者が、新たなアンデットになり、あっという間に壊滅した。
「魔法院の調べでは、ネクロマンサー絡みのアンデットではなく、禁術だとの事です」
 花国からの依頼で調査に携わった、魔法使いが報告する。
 魔法院の対応は素早い。前回の邪神絡みで命を落とした長老の後釜は、魔法力ではかなり落ちるが、研究者として一流のまだ若い女性。魔法力が低い事に対する不安には、セリエを凌ぐ魔法使いトークンが後援に着いた。トークンは40絡みの攻撃魔法に定評のある魔法使いで、ただし、性格に難がある為、魔法院の上級職に付いていない人物だ。
「感染するなど・・・あってはならない。村の者は、焼き払うしかないか・・・」
「サンプルとして、数体頂きたいそうです。もちろんサンプル体の確保には、最高の注意を払います。トークン様が赴いています」
「トークンが・・・つまりは、それほどの難題」
「はい。邪神並みの問題かと。他国にもこの結果は院の判断で知らせます。よろしいですか?」
「よい。焼き払うのを、トークン殿に依頼できないか?」
 アンデットは、人ではない。けれど、村一つ焼き払う精神的苦痛を、自国の隊員にも魔法使いにもできれば味わわせたくはない。
「御依頼承りました」
 院の魔法使いは、恭しく頭を垂れた。

「ハーハハハッ!!!」
 白髪ざんばら髪で、丸眼鏡の男は、空に向かって笑った。
 大地も空も赤く染まる。
 灼熱の、地獄。
 アンデット達は紅蓮の炎に、焼かれる。蛋白質の焼ける不快なにおいに、動きまわる鈍い動きの人だったもの。
 目を背ける光景に、可笑しくて堪らないとばかりの、男。
 セリエを超える魔法使い。院の長老亡き今、世界最高の男。
 名を、トークン。
 アンデットに侵食された村は、トークンの攻撃魔法で浄化される。
 けれど・・・攻撃魔法には、浄化作用のある炎を作り出すものもある。それなのに、トークンの選んだ魔法は、業火で全てを焼き払うもの。攻撃魔法を使う事に快感を覚える性格破綻者のトークン。
 世界最高の・・・危ない男。従えられるのは、現魔法院長老。
 まだ、18歳の少女は、トークンの娘。

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あきゅろす。
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