愛の嵐
蒼の剣の娘
カイザックでもなくイザリでもなくシルクがそれを奮ったのは、海王崩御の直後のことであった。イザリもカイザックも身動きが取れず、他に奮える者の一人は負傷し、もう一人は数年前に命を落していた。そして、邪神ライデンは神子であるセイジと離され異世界に戻されたのだが、短い間とはいえライデンが暴れ狂うのを防いだ部隊の中にシルクはいた。
海国の蒼の剣さえ制御する、稀代の天才。
それがシルクなのだ。
それが・・・何故、ここに?
セイジの疑問にシルクはにっこり微笑んで
「まずは・・・お手合わせを」
と、告げた。
砂漠の長として、武に劣らぬよう努めてきた。
この離宮暮らしで、鍛えていたとはいえ衰えたのもある。
30になろうかというところでいささか体力の衰えも感じ始めてはいた。
けれども・・・。
からからと転がった剣に、屈辱を感じてしまう。
天才と言われようとも、セイジより細くまだ幼さの残る少女に、5回ほどの剣を合わせただけで弾き飛ばされたのだ。
そんなセイジにシルクは微笑んだ。
「凄い腕前」
馬鹿にした響きはなく、セイジは意味を測りかねて面を上げる。
「私ね、カイザックともイザリ様とも五分。魔法を入れてね」
それはつまり・・・。
「知っているかしら?私ね、魔法力は弱いの。つまり、武術のみなら・・・世界一よ」
魔法力に弱いにもかかわらず蒼の剣を操り、騎士団一のカイザックより強い。
ならば・・・。
「私は、世界一強いわ」
てらいもなく告げる言葉は、真実であった。
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