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愛の嵐
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 エリンの砂国守護神ジハーザへの称賛歌が始まる。
 世界最高峰の歌姫が命を込めて歌うそれは、砂国神女長であるシュネに、力を与える。魔法とは異なるが、守護神の守護の力が強まる為、守護神の力を使う魔法や術の援護になるのだ。
 シュネは守護神の守護が強まった事により、狂った場が少し整うのを感じる。これなら、まだ制御しやすくなる。
「術の補助はできませんが、死にかけても私が必ずシュネ殿を生き延びさせますから」
 セリエはそう言って、ノエルを促す。ノエルはにこやかに微笑むと、己の手首に刃物を這わせて差し出した。ノエルの血液は魔法力の坩堝、究極の魔法具によりセリエの魔法力は上がる。セリエは、術の制御後に命の危険に陥るであろうシュネを護ると伝えたのだ。
 ならば・・・躊躇いはすまい。
 シュネは、凱を見る。
 そして、心の中で想う。
 
 守護神様・・・凱なくば、あたしは処女ではなくなっていました。さすれば、この神殿はあたしを得られませんでした。

 神官・神女は童貞処女が必須。他者との交わりは、神官・神女の資格を失う。

 凱の愛する砂王様を、たった一度でいい、助けて。

 神女長としてではなく、凱によって純潔を守られた子供の、必死の願い。
 
 常ならば、どのように悲惨な結果であろうとも、守護神は現世には関わらない。それが、決定。
 だが・・・、ほんの少し力を貸したのは、守護神の感謝だったのだろうか・・・。

 場が緩む。

 シュネは微笑んだ。
 これなら制御できる、してみせる。
 
 場の緩みに呼応して、障壁の様なものが取り除かれる。凱は悟る。サイラの傍に、行ける。
 そう望み、ここまで来た。一瞬躊躇うが、そこで感じた気配。
「そうだな・・・」
 見えないけれど感じるのは、中庸の地に居る筈の隻腕の女性のそれ。錯覚だろうが、勇気づけられ歩を進める。
 だって・・・囚われの最愛の相手を助けるのは・・・。
「サイラ!」
 男の役目だから・・・。

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