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愛の嵐
中庸の地
 中庸の地だと、二人は凱に言う。
 砂王サイラの姉、レイラ。
 砂王サイラの親友、クーことクイン。
 砂王の治世が続くうちは、二人はここから動けない。それが、レイラの成した術の副作用だった。
 でも、辛くはないという。
 サイラの治世が永く続く事を願い、二人は死国に行くのを許されるを待つ。クインは制約がないが、レイラが動けぬのに一人で死国に旅立つ気は、ない。砂王サイラの治世をこの地で、願い待つ日々は・・・決して不幸ではなかった。
「でも、具合が悪そうだ・・・」
 凱は二人の説明に、浅い呼吸を繰り返すレイラを見て言った。すると、レイラはにやりと笑った。
「これは、そなたの為よ」
「俺の?」
 凱は意味が分からず首を傾げる。
「そなたの病は・・・現世では癒せない。しかしこの中庸の地には浄化作用がある。例え邪神の毒で狂った身体でも、癒す事が出来る」
「本当・・・か・・・?」
 凱はレイラの言葉に、面を輝かせる。
 思いどうりにならない弱い身体は、凱の行動を制限し心まで弱らせる。元の己に、戻れるかもしれない。
「本当だよ。レイラちゃんは、凱君の事を癒したい。元の健康な身体に戻ってほしい。それでこの地に呼んだんだ。封印魔法で空間が歪んだから、現世とこの世界が重なった。でもね、生者は異物だから、本当は無理なんだよ」
 クインが、困ったように言う。
「無理?」
「うん。生者がこの中庸の地に居る事は、できない。他の次元にすぐに弾き出される。けれど、凱君の身体が癒えるまで、レイラちゃんが、留めてるんだよ」
 凱は、床に伏すレイラの蒼ざめた顔を見る。
「話を聞いた時、そんな無茶なって思ったけれど、本当にやるんだもん。引きずり出されそうな凱君を、己の能力すべてで、この地に留まらせている。その身が癒える日まで。他の者がやったら、魂ごと消滅しかねないけどね」
「私は、砂王サイラの姉だ。サイラが現世で王である間は、消滅しない。それに、もう後二日程で、身も癒える筈。凱がこの世界からいなくなれば戻る」
「その苦しそうなのは、俺の為。でも、なんで・・・」
 凱に、二人は微笑みかける。
「サイラは一人だ。家族もなく、友もいない。そのサイラがここまで求める相手を、失わせたくない」
「本当は、首を落とすとかはできないけれど、死ぬまで傍に居る予定だったんだよ。サイラが王なら、友として。レイラちゃんが王なら夫として。でも、さっさと死んで、ここで俺はレイラちゃんと過ごして。サイラは王である狂気と孤独に闘う。これは、正しくない事だよ。そのサイラが好きな凱君に、傍に居て欲しい。その為なら俺達は何でもするよ」
「違う!」
 凱は、二人の言葉を遮った。

 

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あきゅろす。
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