[携帯モード] [URL送信]

短編
物語3(中年×会長)
 恭一郎の覚醒は唐突だった。
「あ・・・おまえ」
 目の前には、愛しい相手。転校生の・・・。
「やあ、恭一郎」
 にやりと口元が歪む。
 ここで恭一郎は、己が全裸でベッドに括り付けられている事に気が付いた。
「どういう事だ?」
 頭が重く、思考が回らない。
「恭一郎・・・お兄ちゃんだよ?」
 転校生の頭から鬘が取れると、そこにはてらてらとした薄い頭髪に覆われた頭部があった。瓶底眼鏡の下は、皺のある目元。ぶかぶかの制服の下には、下腹の突き出た身体。
「あ・・・」
 恭一郎は見覚えのある顔に、戦慄する。

 恭一郎の母親は再婚である。元夫は田舎成金で、そこで冷遇されて暮らしていた。男の子を一人生んだが、田舎の長男と持て囃され姑の手で甘やかされ育ち、母親を馬鹿にしきっていた。元華族の没落した末の母親は、その身分に甘んじつつ勝機を待ったが、離婚が成立した時、子供は手のつけられない馬鹿息子になっていた。母親を馬鹿にする子供は離婚後父親の下で暮らすを望んだので、親子は離れ離れになった。
 一年後、どういったいきさつかは分からないが、恭一郎の両親は出会い、恋に落ちる。そして結婚。
 没落したとはいえ名門の末の母親との婚姻が、父親には有益であった状況だったと、恭一郎は予測する。しかし利権が絡みつつも、双方には愛情もあったので結果オーライというところだ。
 そんな母親の、前婚姻の結果の息子。
 名を、北斗といったか・・・。
 目の前にいる転校生であった人。
 恭一郎の種違いの、兄。
「あんた・・・俺様より14も上だろうがよ!」
 顔は知っていた。母親が病で倒れた時、見舞いに来た事がある。その時の無礼な態度に、子供だった恭一郎は憤慨し、種の違う兄を嫌悪した。当時、恭一郎10歳。北斗24歳。
「恭一郎に会いたくて、ねえ、本当に」
 北斗は当時10歳の恭一郎を、舐めるように見ると言った。
『アイスを買ってあげよう。お兄ちゃんとおいで』
 蒼い顔の母親を気にした風もなく、初対面の子供の手を取る北斗は、舌舐めずりしかねない有様。性的知識はなかったが、恭一郎は不快を感じ、それに頷きはしなかった。
「可愛い、恭一郎」
 変装を解いた北斗は、頭髪のさびしい脂ぎった小太りで加齢臭もする、中年男性だった。
「お兄ちゃんと、セックスしよう」
 北斗は、にんまりと厭らしく笑った。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!