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短編
物語2
 物語は少しさかのぼり、二月前。

「恭一郎様が、いない?」
 九狼の不機嫌な様子に、剣は首を竦めた。
「いえ、ね。帰省とのことでしたが、帰ってないんですよ・・・ね・・・」
「役立たず」
 九狼の言葉に、剣は落ち込む。
 山口剣(やまぐちつるぎ)は、恭一郎の親衛隊の隊長である。実は、一度解散した親衛隊だったが、野放しになったチワワのふりした猛犬の力技に半泣きになった恭一郎が、九狼に泣き付いて再結成された。要は、元親衛隊幹部4人ほどの実家に、九狼が手を廻したのである。そして、本来留学中だった元隊長の剣も、家に手を廻され留学を延期され帰国。とりあえず、仮の隊長として恭一郎の尻を守ってきたのだが・・・。
「まさか・・・幹部連の家に・・・」
「それはないです。やらかしそうな猛犬チワワん子達は、全員居場所を特定、監禁はないです」
 ロリコンだが使える剣は、それなりの仕事はしてきたようだ。
「と、なると・・・プライベート」
「・・・で、ですねえ・・・転校生君が、ねえ・・・」
 剣は言いにくそうに、もじもじし出す。
「転校生?」
 恭一郎が惚れてかまい倒していた転校生は、今いずこというほど学園で影が薄くなっていた。
 が・・・。
「転校生、偽物でした」
「はあ?」
 剣の報告に、意味が分からず首を傾げる。
「え・・・と。本来転校生としてくる筈だった子は、完全な引き籠もりで、この家の両親が高校の卒業の事実が欲しいが為に雇った人間が、学校に来ていまして。身代り高校生ってもんです。で、本来の顔がばれないよう、変装していたようで」
 転校生は、ぼさぼさの鬘と瓶底眼鏡を使用していた。それがそんなことの為だったとは。
「・・・親馬鹿が。とりあえず、その代理は、どんな人物だと?」
「それが・・・皆目・・・」
「何?」
「うあああ・・・。裏サイトで斡旋された人物で、本当の名も知らないそうです。で、この転校生も、消えてまして・・・。あの・・・俺、たまに感じたんですよね。視線が・・・猛禽・・・猛獣です。たぶん彼は、チワワん子達と同じタイプの子です」
 つまりは、バリタチの変態。
「・・・それをさっさと報告しておかんかーーーー!!!」
 九狼の罵声が木霊した。
 

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あきゅろす。
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