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短編
鬼神遊戯10
「夜の街で何度も色んな女と子を成しましてなぁ。しかも、皆、供養もせずに塵の様に捨てますわいなぁ・・・」
『泣くな、泣くな。爺がおるぞ』
「叶わず産めば、そのまま生ごみに出したりなぁ。人であろうに、己が子であろうに」
「『畜生でさえせぬ所業。いやさ、人であるが故か、なあ』」
 餓鬼達は凪の遊びの犠牲者たちである。
 鬼姫は、冷たい汗が脇を伝うのを感じた。
 鬼姫の位は高い。が、古森は位の特殊なあやかしである。位的には低いが、餓鬼達の事に関してだけは鬼姫でも口の出せない盟約がある。餓鬼を大量に生産した相手への制裁も、これに含まれる。古森のもう一つの役割は、餓鬼を作った者を屠ったり傷つける事でもある。
 考えれば分かった事だ。
 餓鬼になる様な畜生であるならば、何をしたかもっと調べるべきであった。学園での所業を調べた段階で、これはいけると踏んだのが間違いで、夜の街で子を何度も堕ろしたり産み捨てたりの片割れであったと知れば、そもそも近づこう筈もなかった。
 凪は古森の獲物だったのだ。
 学園に古森が居たのは、凪を屠る為であったのに・・・。身を潜め機会を伺い、そこに鬼姫が乱入してしまった。凪は餓鬼になり、それは古森の望むところではない。
「餓鬼になったら、屠れませんわいなぁ」
『ほんに、ほんに』
「大人の餓鬼の権利は、古森にはありませんわいなぁ
『ようやっと、子供達の恨みを晴らしましょうにい』
「『大人の餓鬼の生命与奪権は、鬼神様のモノですわいなぁ』」
 そう・・・餓鬼になった凪を殺められるモノは、鬼神しかいない。
 位の高いあやかしなれば、餓鬼に人を変える事はできるし、傷つけることも、使役する事も出来る。
 が、殺める事ができるのは・・・長である鬼神のみ。どの様な有り様でろうと、鬼神の手によらなくば死んだ方がマシな有り様でも、餓鬼は滅びぬ。
 子供の餓鬼達は、いつの間にかいなくなる事がある。透明な心で餓鬼になった者達は、古森に大事にされ心が満ちると餓鬼で無くなるのだろうとは、皆の想像である。が、畜生にも劣る大人の餓鬼は、心満ちる事もなくただ鬼神の手による生の終焉なくば、生き永らえるのだ。
「死ぬよりもつらい目に、合わせ続けようぞ」
 鬼姫が言うが、古森は首を横に振る。
「それは大人の理屈ですわいなぁ」
『子供達が、泣きやみませんわいなぁ』
「痛い苦しいより、存在が無くなるが子供達への供養ですわいなぁ」
『そうしなければ』
「『可愛い子供達が、餓鬼のままですわぁ』」
 鬼姫は、詰めの甘さからの敗北を悟った。

 ほげあほげあほげあ・・・。
 びええええん、びえええん・・・。
 きゃふうう、きゃふうう・・・。

 鬼姫は凪を置き去り、その場を辞した。

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