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短編
鬼神遊戯9
「おまえ・・・まさか・・・」
 鬼姫はまさかと蒼ざめる。
「おんやぁ、さすがですなぁ、お気付かれましたわいなぁ」
『さすがですわいなぁ』
 会計はへらへらしながら、シャツのボタンを外す。

 ほげあほげあほげあ・・・。
 びええええん、びえええん・・・。
 きゃふうう、きゃふうう・・・。

「鬼姫様の御前なるぞ。大人しゅうせいやぁ、良い子達ゐ」
『爺がついとる泣くんやないわぁ』
 全開になった会計の胸から腹にかけてあったモノ。
 皺深い金目の老人の顔と・・・その下に蠢く人形程の無数の顔。禿げあがった頭皮にぎょろりと突き出した眼、黒眼は極端に小さく、カサカサの肌。
 そこに居たのは、凪がなった餓鬼とそっくりの無数の顔。
「やはり・・・古森」
 鬼姫は呟いた。
「何故、古森が邪魔をする?おまえの役目は水子や幼子の餓鬼をの世話であろう」
 古森は魑魅魍魎の類であり、幼くしてなった者や水子の餓鬼を守るものである。
 何故かは分からぬ。古森にも分からぬ。ただ、そうと生まれそうと生きる。
 古森の場には、他のモノが影響出来ぬ餓鬼の集団がいる。古森は、その子達の世話をして暮す。時に増え、時に減り・・・その数はあまり変わらない。古森の世話で餓鬼であったモノが別のモノに変じたのかもしれないし、そうでないかもしれない。古森には分からないし、分からぬままで良い。ただ、古森は真摯に餓鬼の世話をする生き物である。
 古森には顔が二つある。見た目は人に近しいが、胸の部分に第二の顔金目の老人を抱えるが、服を着れば外からは分かる訳もない。そして老人の顔の下に餓鬼を抱える。両腕に持ってそこに当てると、餓鬼は顔を残して体内に埋まり顔も小さくなって、心地良さげに笑う。古森も可愛い餓鬼の喜び様に、順番に抱えるので腹の部分には常に無数の餓鬼の顔が埋まる。

 ほげあほげあほげあ・・・。
 びええええん、びえええん・・・。
 きゃふうう、きゃふうう・・・。

「おうおう、泣きやみませんぞ、鬼姫様」
『泣くな、爺が悲しいわぁ』
「悔しかろう、恨めしかろう・・・。鬼姫様、共食いもせずに餓鬼と化す者ですわぁ・・・分かりませぬかぁ」
『おうおう・・・泣くな、愛し子達ゐ』
「ま・・・さ・・・か・・・」
 鬼姫は隅で転がる凪であったモノを見る。
「この子達はぁ、その男に殺されましてなぁ」
『鬼の方がええわいなぁ。ほれ見い、おまえ達の父親じゃ』

 ほげあほげあほげあ・・・。
 びええええん、びえええん・・・。
 きゃふうう、きゃふうう・・・。

 餓鬼達が凪であったモノを、一斉に見据えた。




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あきゅろす。
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