短編
俺様彼氏・・・おしまいの話
彼は、自分が嫌いだった。
人間が、嫌いだった。
けれど・・・少女は言った。
「人間は美しいのよ」
少女、玲子は、人間の手足の動き、言葉を操る声帯、内臓の働き、そういった物が、堪らなく美しいのだと言った。
「私ね、人を作りたいの」
アニメに影響されてそんな事を言い出した小学生の少女は、けれど、その夢の為に努力を惜しまない人間だった。玲子の生き方は、人間嫌いの、親の死にもああそうか程度の冷たい心根の橘銀河の、何かを変えた。玲子の語るそれは、アンドロイドと呼ばれる類の物で、夢物語のように聞こえて、けれど、玲子の生家である鳳凰院家の研究施設でなら、時はかかるが叶えられることのような気がした。
銀河は、高校入学の頃には、すっかり玲子に好意を持っていた。ただ、それは、仲の良い妹に対するような愛情で、男女のそれではなかった。しかし、銀河は自分が将来的にも、恋愛が出来ると思っていなかったので、玲子に仕える未来を願っていた。よって、玲子の婚約者に仕え、間接的に玲子に関われるのは、願ってもない事であった。
「あ・・・う・・」
どれぐらいの時間がたったろう・・・。
銀河は、自分の中に出入りするモノの存在に、呻いた。けれど、その呻きさえ・・・もう出なくなる。
「アイシテル・・・アイシテル・・・オレノ銀河」
相手が誰だかさえ、もう分からない。皆、言う言葉は同じで、することも同じだ。中に出されるモノの感触さえ分からない。痛みも感じないほどに蹂躙された後腔は、裂けて緩んで、快感など与えないであろう。けれど、銀河に圧し掛かる男達は、皆うっとりとしている。
もう拘束もされていないが、抗う力はない。荒い行為に股関節は脱臼し、肩の骨も砕けた。殴られた顔は、腫れあがって化け物のような様相だろう。
そんな銀河を、男達は歓喜のままに犯す。
ああ・・・玲子・・・。
もう、休んでも良いだろうか・・・。
君が、幸せになる横で、生きてみたかったけれど・・・。君の側にいたら、いつか俺も人をもっと愛して、美しいと言えたと思うけれど・・・。つらいんだ・・・。
このままじゃ、君が美しいと言った人間が・・・汚すぎて・・・君を嫌いになってしまいそうだ・・・。人間なんか、美しくないじゃないかと・・・君に言いたくなってしまう。
だから、玲子。君が美しいと言った人間に、心底絶望する前に・・・目を瞑っても・・・良いだろう?
君の側に行って・・・誰かを愛して・・・俺も人間は美しいと思うよって・・・言いたかったけれど・・・。
玲子、すまない。弱くて・・・耐えられなくて・・・。
橘銀河は、そのまま眼を閉じて・・・苦痛から逃れる事を選んだ。
もし、生まれ変わりがあるならば、人間は美しいと言えるようになりたい。己も、それ以上に誰かを愛して、幸せだと言えるよう。
できれば、玲子・・・君が幸せに笑う姿を見れて、自分の愛する相手も紹介できたら・・・良い・・・。
そうだと・・・良い。
彼は・・・目覚める。
「初めまして・・・UK−7007。いいえ・・・銀河」
おしまい
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