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短編
俺様彼氏・・・未来
 玲子さんは、梅が綻ぶ頃・・・逝った。
 理事長は・・・精神病院に行った。UK−7007に手を出した葉月を殴り殺して、可笑しくなった。
 会長の父親は、UK−7007に入れ込んで離婚騒動。離婚のごたごたで、刃傷沙汰。今では車椅子が必要な身体になり、UK−7007は返品された。
 副会長の叔父は、自殺したそうだ。側には、停止状態のUK−7007があったという。
 会計の年の離れた兄は、自分でUK−7007を返品。その後、麻薬中毒で現行犯逮捕。まあ、家の権力で釈放後、どこかに軟禁状態らしい。
 書記の父親は、UK−7007と共に、行方不明。

 そして・・・俺は・・・。

「会長が?」
 玲子さんの従兄妹に当たる、UKコーポレーションの会長は、60過ぎてもかくしゃくとした精力的な人物だ。
「そう、呼んでるよ〜〜」
 そう言って来るのは、同僚の研究員。
 あれから、12年たっていた。
 俺は、必死で勉強して、大学は外部受験して、その後、UK−コーポレーションに研究員として採用された。
 だって・・・もう一度、銀河に会いたかった。
 7年後にセクサロイドは一般発売されたけれど、あくまで、動くダッチワイフ的な物で、あの銀河の様に笑って、怒って・・・人間と同様の感情豊かなそれは・・・出来なかった。
 何故、銀河だけが特別だったのか分からないけれど・・・俺はあれから、どんな相手にも魅力を感じないで、ずっと独りで生きてきた。
 そんな俺に、何故、会長が?
 ともかく、俺はあまり使われない会長室に急いで行った。

「しつこいな・・・君は」
 会長は、開口一番に言った。
「12年間、あんな物を忘れないで。橘銀河は、大した男だったが、それで、狂った馬鹿者どもと、同様の愚かさだ」
 会長は、橘さんの事も知っているらしい。
「申し訳ありません」
 俺は、とりあえず謝った。
「玲子からの、遺産だ。12年経って、おまえが独りでいたら、渡せとの遺言でな。30になる直前だな」
 そう言って、会長は、冷蔵庫が入っているようなダンボールを指差した。
 まさか・・・。
 面倒臭そうに、会長はダンボールを開封する。
 全裸の・・・セクサロイド。
 UK−7007。
 その目が開く。

「良・・・」
 
 銀河・・・。

 忘れられない人が居た。人じゃないと言われても、俺にとっては唯一の人。
 公式番号UK−7007.
 でも、俺が呼ぶ名は銀河。

 12年前、動かなくなった銀河。玲子さんは、本当は運び込まれた銀河をもう一度動かせたけれど、それをしなかった。
 12年経っても、俺が忘れていなかったら、仕方ないから再起動させてとの伝言付きで、残された遺産。
『出来れば、銀河の事は忘れて・・・幸せになってほしい。こんな事私の言う事じゃないけど、銀河は人じゃない。人を愛して、幸せになってほしい。でも、もしずっと銀河を忘れられないでいたら・・・私が利用した可哀想なあの子を、よろしくお願いします。』

 おかえり・・・俺の・・・俺だけの銀河・・・。


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あきゅろす。
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