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短編
俺様彼氏・・・渇望
 5人の男達は、目の色を変えて銀河とそっくりのセクサロイド達を抱き寄せる。
 学園を卒業して、妻帯者も、芸能人と婚約中の者も、離婚した者も・・・20年以上・・・橘さんを忘れていなかったそうだ。
 自分達が愛して殺した少年。
 玲子さんは、笑っている。目は笑っていないけれど・・・。
『銀河、やっと私のものに』
『銀河・・・銀河・・・』
 抱き寄せ弄り、口づけ・・・感極まって泣いている者まで・・・。
 でも・・・気が付いていない。
 この銀河は・・・所詮UK−7007は、物だ。
 唯一、俺の銀河だけが・・・。

「他のUK−7007は・・・言うなれば、動くダッチワイフ。でもね・・・貴方の銀河だけは、違ったの。私の銀河が、甦ったような・・・。人そのものの、動き・・・感情もあって・・・他のタイプのセクサロイドと比べても・・・銀河だけなの・・・。だから・・・モニターの葉書に貴方が居て、私の独断で選んだ。今、学園には銀河を殺した5人の身内が揃っているのは、調べて知っていた。しかも・・・生徒会と転校生が、濃厚に関わっている貴方と共に居れば、銀河は、必ずその身内と接触する。生徒会の4人が、理事長を除く残りの4人の身内」
「それで・・・」
 この前、文化祭があった。そこに、呼んだのだという。生徒会の身内だから、可笑しく思われる事もなく学園を訪れ、動く銀河を認めれば・・・。
「彼らに言ったの。文化祭で、動く銀河を見て・・・我慢できる訳ないでしょう?身内の生徒達から、貴方と銀河の関係も知って・・・自分達の想いを抑えられなくなった。貴方の銀河に指令を出したわ。5人が来ているから、理事長室に行きなさい。彼らの命令を聞きなさい。5人が、理事長室で何をしたかは・・・ごめんなさい・・・」
 銀河・・・。
「それで、自分達の銀河が欲しくなった。UK―7007購入の条件は、橘銀河の遺骨。罪は問わない。今日にしたのは、銀河に触れて正常な判断のつかないうちでなければ、冷静になって交渉が成立しなくなると困るから、今日でなければ購入はできないとせかしたの。だって、刑事罰にならないとはいえ・・・彼らのしたことを認める行為を、正常な状態なら許諾しないわ。でも、20年以上、想っていた相手に触れて、今は、皆・・・」

『でも・・・とても・・・苦しかった』
「貴方は・・・橘さんの事はお気の毒ですが・・・俺の銀河も望まぬ相手に蹂躙されるのは、つらかった筈でしょう」
 玲子さんは、身体を震わせた。
「分かっているわ。でも・・・時間がないの。私ね、来年の桜は見れないって、医師に言われたの。死ぬのは怖くないけれど・・・銀河の遺骨が、あいつらの手元に残されるのは許せない。けれど、お金じゃあ動かないわ。最愛の相手の遺骨だもの。だから、それに見合う物を提供しないと」
 玲子さんは、俺を見据えた。
「手段を選ばない。銀河をきっと連れて行く」
 ああ・・・この人は・・・鬼になったんだ。
「それで・・・誰が苦しもうとも・・・」
 自分の死を宣告されて、望んだのは橘さんの事。
 でも・・・銀河は・・・。

 UK−7007シリーズの中で、たった一体特別な俺の銀河は、その後・・・目覚める事はなかった。


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あきゅろす。
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